「ギャンブル地獄」で苦しむ大勢の患者を長年、地元福岡県の開業医として診療し続けてきた。パチンコ・パチスロ、競馬、競輪。膨れ上がった借金のため、うそをついて借りた金をまた賭ける。周りを不幸にし、家族に「おまえ、死んでくれ」と言わせてしまうギャンブル障害(依存)だ。
国内の患者は数百万人と推計される。「誰しもかかりうる病気です。ギャンブルをやめれば元の人間に戻りますが、たくあんが大根に戻らないように脳は元に戻らない。薬もない」
治療は難しい。「地獄」に戻らないよう同じ病気と闘う仲間と集い、自分のことを正直に話す自助会に通い続ける必要がある。「地獄に垂れたクモの糸です」
日本では誘惑は数え切れない。公営ギャンブルもパチンコもそこら中にあり、宣伝し放題。大阪ではカジノ施設建設を目指す動きが進んでいる。
「日本の為政者は古代から、すごろくなどの賭け事を禁じてきました。それが戦後復興を名目に公営ギャンブルが始まり、官庁や警察の利権も絡んで拡大してしまいました。こんな国は他にありません。異常さをちゃんと認識すべきです」
精神科医としていち早く1990年代から学会などで問題を指摘してきた。作家としても著書で啓発を繰り返している。「日本という国家がギャンブルに依存しているようなものです。規制するしかありませんが、目が覚めないですね」
今年春で開業医を引退し作家業に専念する。76歳、声は力強い。
(共同通信)