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資金難 花火咲かず 全国25大会中止、物価高影響 収入源の多角化課題


資金難 花火咲かず 全国25大会中止、物価高影響 収入源の多角化課題 4年ぶりに開かれた大津市の「びわ湖大花火大会」=8月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 資金難のため中止に追い込まれた花火大会が今年、全国で少なくとも25あることが共同通信の調査で分かった。物価高や警備強化による経費が膨張。新型コロナウイルスの影響で協賛金を集めにくくなった。大会を下支えしてきた行政の補助金も減る傾向にあり、来年以降、中止はさらに増える可能性がある。

 花火大会には多額の経費が必要で、行政の補助金と民間からの協賛金や寄付金で運営してきた。今後は有料観覧席の販売など収入源の多角化が課題となりそうだ。

 コロナ禍による行動制限がなくなった今年、大津市の「びわ湖大花火大会」など各地で4年ぶりに花火大会が開かれた。ただ、観光客の足が遠のいた間に宿泊、飲食などの分野で廃業が相次ぎ、地域経済は停滞。地元企業や住民に金銭的な協力を仰ぐのは難しい。

 こうした理由で開催を断念したのは千葉県御宿町の「おんじゅく花火大会」。町観光協会の吉清文夫代表理事は「1500発を打ち上げる30分足らずの間に500万円強が消えてしまう。今後は花火にこだわらない誘客方法を考える」と話す。

 物価高も悩ましい。火薬代も警備に伴う人件費も値上がりした。花火大会を運営する実行委員会からは「経費はコロナ禍前の1・5倍」との声が相次ぐ。

 補助金を減らす自治体も増えている。開催費約1200万円を町の補助金に依存する岐阜県笠松町の「笠松川まつり」は、さらなる経費増が見込まれるとして中止を選んだ。花火打ち上げ船の船頭が廃業した事情もある。実行委の横井良典さんは「再開を期待する声もあるが、一晩でこれだけの税金を使うことに町民の理解を得られるだろうか」と不安を口にした。

 他に北海道余市町の「北海ソーラン祭り」や青森県三沢市の「みさわ港まつり花火大会」なども資金難が主因で花火を取りやめた。


地域経済疲弊 影落とす 協賛金、行政補助難しく

 地域経済の疲弊が花火大会に影を落としている。新型コロナウイルス禍の爪痕が残る中で協賛金を集めるのは難しく、行政の補助もままならない。物価高と警備コストの上昇、運営側の担い手不足が追い打ちをかける。日本人が親しんできた夏の風物詩を維持するのは簡単ではない。存続か中止か。各地の実行委員会が頭を悩ませている。

 花火をやめて昼の秋祭りに変えたのは、岐阜県大垣市の「もんでこかみいしづ」。寄付してくれていた業者が廃業し、補助金も減少。担当者は「コロナ禍で中止が続き、寄付を集めに行きづらい」と話す。

 人口減少や高齢化で神事のみを開催したのは三重県志摩市にある渡鹿野島の天王祭。コロナ禍前は島外から若者が助っ人として来たが、今は祭りの存続も危ぶまれる。

 一方、岐阜県下呂市の「下呂温泉花火ミュージカル夏公演」はふるさと納税制度を使った「ガバメントクラウドファンディング」で財源を確保。市外企業からも寄付を募り、例年並みの花火を打ち上げることができた。

 有料観覧席数を増やし、単価を上げて経費増に対応するケースも増えている。ただ、地元からは「これまでのように花火を楽しめない」と不満の声も上がっている。

(共同通信)