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オスプレイ墜落1週間 屋久島住民の日常直撃 「南西シフト」現実に


オスプレイ墜落1週間 屋久島住民の日常直撃 「南西シフト」現実に 屋久島空港に着陸する米軍のヘリ=3日、鹿児島県・屋久島
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 鹿児島県・屋久島沖の米空軍輸送機CV22オスプレイ墜落事故から6日で1週間。縄文杉で知られる世界自然遺産の島に自衛隊や米軍の基地はなく、多くの住民にとって「軍隊」は身近な存在ではなかった。だが事故は、南西諸島の防衛力を強化する「南西シフト」に島が巻き込まれている現実を突き付けた。部隊の展開や訓練が日常を一変させるリスクを目の当たりにし、住民は急速に不安を募らせている。(1面に関連)

生活

 「訓練や軍備増強が続くと、今回のような事故はより身近になるかもしれない。不安に思う面はある」。地元漁協参事の鮫島洋一さん(58)は表情を曇らせた。

 墜落により沖合では機体の残骸が漂い、海面に油が広がった。海上保安庁や自衛隊の艦船が多数展開し、24時間態勢で救難活動を続け、漁師たちも捜索に協力してきた。

 本来なら高級魚シマアジ漁の時期に当たる。鮫島さんは「漁に出れば捜索の邪魔になりかねないし、残骸が当たれば船が傷つく。この状況が長引けば、組合員の生活に影響が出る」と心配する。

 水産加工会社に勤める女性(66)は、すり身を卸している大阪府の業者から「納入は大丈夫なのか」と問い合わせがあったと明かす。「これまで基地問題を自分ごととして考えたことはなかった。漁業関係への影響が一番の懸念だ」と訴えた。

当事者

 海洋進出を強める中国を念頭に置いた南西方面の防衛力強化は続く。屋久島の北東約40キロに浮かぶ無人島・馬毛島(鹿児島県西之表市)では、米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)受け入れに向け、滑走路を含む自衛隊基地の建設が進む。FCLPは早ければ2025年度にも始まる。

 屋久島町のタクシー運転手川東洋人さん(73)は「馬毛島は目と鼻の先。今回のような事故が起きないか」と硬い表情を浮かべた。馬毛島基地ができても屋久島町は米軍再編交付金の対象にならない。「事故だけもらうことにならないか。墜落は安全保障を考えるきっかけになった」と語る。

 馬毛島基地の建設への反対を訴えている屋久島町の真辺真紀町議は「馬毛島は遠くなく、軍用機は屋久島の空を頻繁に飛ぶようになる」と強調した。「事故が起きてから騒ぐのではなく、屋久島も当事者という意識を持たないといけない」

(共同通信)