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【深掘り】にじむ “米国優先” オスプレイ、地元説明後は飛行強行か 


【深掘り】にじむ “米国優先” オスプレイ、地元説明後は飛行強行か  MV22オスプレイなどが駐機する米軍普天間飛行場=9日午前10時54分、宜野湾市(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 鹿児島県・屋久島沖で昨年11月に起きた米空軍CV22オスプレイ墜落事故に関し、米軍は全世界で飛行を停止していたオスプレイの運用再開方針を発表。日本政府も追認した。防衛省は事故につながった部品の不具合は他のオスプレイでも起こり得る共通の問題だと認めたが、どの部品であるのかや不具合の詳細を伏せている。地元の理解や県民の安全よりも「米国の事情」(木原稔防衛相)を優先する日本政府の配慮が透ける。

 県関係者は「日米共同で発表したということは(再開まで)そう間を置かないのではないか」と懸念。普天間所属の海兵隊24機をはじめ、各軍のオスプレイが飛び交う県内では警戒感が広がる。

「詳細」証明できず

 オスプレイの飛行再開を巡って木原氏はこれまで「主体的に判断する」などと述べ、防衛省が厳然と関わると強調してきた。省幹部は「米軍の説明をうのみにしない。少なくとも筋が通っていない説明は認めない」と解説していた。

 言葉と裏腹に、飛行再開を容認する説明からは米国に配慮する姿勢が際立つ。「前例のないレベルで詳細な情報提供を受けている」というが、内容は明らかにせず。情報の確度を証明できる形にはなっていない。

 木原氏は臨時会見で、事故原因を詳しく説明できない理由として、米国内で訴訟が起こされる可能性に言及。飛行再開を急ぐ理由についても「米国の事情」などとし、地元の理解を得る必要性よりも米国への配慮を優先する姿勢をにじませた。防衛省関係者によると、地元への一定の説明後は飛行を強行する構えだ。

 オスプレイ墜落を巡って政府は当初から米側に弱腰で主体性のない姿勢に終始している。事故当日には矮小(わいしょう)化するかのように「不時着水」と表現し、翌日以降は米軍の表現に合わせて「墜落」に修正。事故後の米側への申し入れでも、飛行の停止や自粛など軍の運用に踏み込む表現は避けた。

再開ありき

 国内で飛行を再開する時期は未定だが、防衛省は各種対策を講じれば「安全に運用を再開できる」との評価を示した。このコメントに県関係者は「政府としても『安全』だと認めている。地元への説明前から、飛行再開が前提になっている」と、再開ありきの姿勢だとして強い警戒感を示した。

 県内では「事故原因の早期究明と結果の速やかな公表」(松川正則宜野湾市長)などを求める声が上がっていた。

 防衛省関係者によると週明け以降、沖縄防衛局が関係自治体を回り、飛行停止措置の解除や日本側もこれを認めたことを伝えたい考え。

 ただ、説明する内容は「対外的に説明できる」範囲としており、8日の公表分以上のものは出てこないとみられる。

 県関係者は「まずはしっかり国の説明を聞きたい」として、国が行うとした地元説明を待つ考え。その上で「懸念が払拭される説明が行われることが大前提だ」と語り、安易な飛行にくぎを刺した。

 (明真南斗、知念征尚)