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【深掘り】オスプレイ事故発表まで9時間、投票終了後に「一部損傷」 防衛相は調査前でも「問題ない」


【深掘り】オスプレイ事故発表まで9時間、投票終了後に「一部損傷」 防衛相は調査前でも「問題ない」 陸自与那国駐屯地から離陸を試みる陸自V22オスプレイ。機体が左右に大きく揺れ、左翼が地面と接触した=27日(基地いらないチーム石垣提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 日米共同統合演習「キーン・ソード25」に参加していた陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイが陸自与那国駐屯地内で事故を起こした。県内や奄美群島(鹿児島県)など南西地域の防衛体制強化の一環で推し進められる米軍と自衛隊の共同訓練。事故や基地被害につながる現実が露呈した。

 与那国島に自衛隊と米軍のオスプレイが初めて飛来する機会となった今回の演習。念願を果たした直後の事故に、防衛省関係者は「場所が場所だ」と頭を抱えた。一方、別の自衛隊関係者は「一定の反発はあるだろうが、共同訓練そのものを取りやめるほどの影響はないだろう」と高をくくる。

 オスプレイを巡っては米空軍機が昨年11月に墜落し、それに伴って陸自機の運用も止めていた。1年間に2度も運用を止める異例の事態だ。中谷元・防衛相はオスプレイの安全性について「問題ない」との考え方を改めて示したが、事故調査はまだ始まったばかりで根拠は乏しいのが実情だ。

 今回のオスプレイ事故では防衛省による公表の遅さも問題となっている。事故が起きた27日は衆院選の投開票日で、投票は午後8時まで実施された。事故発生時刻は同日午前11時38分ごろだったが、防衛省が公表したのは9時間近く経過した午後8時半だった。

 選挙への影響を考慮した可能性を記者会見で問われた中谷防衛相は「そういうことはない。情報の確認や事務調整をした上で間違いのない事実発表に至った」と否定した。

 27日午後8時半の発表は事故とは説明せず「機体の一部損傷」という名目だった。だが、並行して調査委員会の会合が開かれており、公表文を出した約30分後の午後9時ごろには「航空事故」と認定していた。それにもかかわらず、積極的な広報はせず、29日の会見で中谷防衛相が記者に問われて答えた。

 県には27日に事案の第1報は伝えられたが、事故認定の事実については29日夕現在も説明はないという。県は29日、沖縄防衛局に対し、内容が判明し次第、原因を説明することや、飛行再開時の事前連絡を求めた。

 県は今回の演習に先立つ9月、防衛局に対して米軍および自衛隊のオスプレイの県内での使用自粛を求めていた。県関係者は「演習期間中に鹿児島県でも緊急着陸があったばかり。『またオスプレイか』という思いだ。なぜバランスを崩したのか説明が必要だ」と語った。

 (明真南斗、知念征尚)