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核禁会議閉幕 識者談話 山田寿則氏(明治大学兼任講師) 核抑止に挑戦、次の段階へ


核禁会議閉幕 識者談話 山田寿則氏(明治大学兼任講師) 核抑止に挑戦、次の段階へ
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 核兵器禁止条約の第2回締約国会議を現地で傍聴した。条約は「核の非人道性」を原点としている。今回の会議では「(核による威嚇で安全を守る)核抑止に挑戦する」という新しい発想を加えた。採択された政治宣言と決定は、核が使われた際の想定外の被害の大きさなど科学的な知見を踏まえた骨太な議論を呼びかけ、次のステップに踏み出したと言える。

 焦点の一つだった核被害者の援助は掘り下げ不足だった。被害者のいる締約国を資金援助するための仕組み作りが優先された一方、放射線量の基準など具体的な議論はなかった。資金の拠出に関して言及した国もない。課題の先送りと言える。

 特徴的だったのは、条約に不参加の国の被害者が声を上げたことだ。日韓の被爆者に加え、米国の核実験で被害を受けたマーシャル諸島の住民や、ウラン鉱山のあるオーストラリアの先住民らだ。会議は各国に自発的な被害の報告を求めることを決めたが、被害者側の意見がないと一面的な議論に終わる。

 被爆者の発言には、どの国の人も耳を傾けた。岸田文雄首相は条約が核廃絶の「出口」だと言う。言い換えれば廃絶に向かう道の上には乗っているという意味でもある。「出口にたどり着くために、どうするのか」という問いを、市民社会は投げかけるべきだろう。

 (国際法)
 (共同通信)