ウミンチュ待望「旭面」復刻へ 沖縄・嘉手納の杉浦さん、製造奮闘 伝統の潜水具「絶やさない」


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 【中部】嘉手納町のダイビング専門店店主の杉浦武さん(50)が、現在は製造されていない大正時代に発明された潜水マスク「旭面(あさひめん)」の復刻を目指し、インターネットを通じて資金を募るクラウドファンディングで支援を呼び掛けている。旭面は船上から空気が送られてくる潜水マスクでモズク漁などで用いる。漁師たちはほころんだ部分を継ぎはぎを重ねていたが、限界となっていた。杉浦さんは「戦後の混乱期から海人(うみんちゅ)が生きるために使っている潜水マスクは彼らの心のよりどころでもある。絶対に完成させたい」と奮闘している。

「旭面」の復刻版を制作する杉浦武さん=13日、嘉手納町の旭潜水技研

 約1年前、うるま市の浜比嘉島でモズク漁を営む新里清信さん(69)と宮下政也さん(33)が杉浦さんを訪ねた。2人は犬の首輪や車のタイヤのチューブ、ダイビングスーツで補修するなどして使い込んだ旭面を持参。「直してほしい。どうしても旭面でないと駄目だ」と訴えた。潜水マスクを見るなり、杉浦さんは「博物館にあるような古い潜水マスクを作るなんて無理だ」と断った。

 だが、何度も新里さんらの訴えを聞き、調べるうちに「旭面は日本人が大正時代に世界で初めて発明した潜水マスクだ。ものづくりの技術が詰まっている。絶やしたくない」と考えるように。使命を感じ、復刻版の製造に取り組むことを決意した。

 杉浦さんはかつて旭面を生産していた東京の工場を探して歩き、さび付いた当時の金型にたどり着いた。さらに創業者の遺品として保管されていた最後の旭面を発見した。

 今までに数十回東京や大阪の工場と沖縄を往復し、現在は3月の完成を目標に5社の工場と付き合いながら金型や新品を参考にしてガラスやゴム部分、ネジなどの部品を作っている。

 漁師の新里さんは「モズク漁では2時間以上も海底を歩く。観光で使うようなボンベを背負っていたら仕事にならない」と話す。宮下さんも「視界が広く、出っ張りが少ない旭面は網に引っかかる心配もない。今までいろんな店で断られていたが、杉浦さんが取り組んでくれたのは奇跡に近い」と期待を寄せる。

 杉浦さんは「どうにか完成させ、県内でモズク漁を頑張る海人たちに使ってほしい。男と男の約束だ」と熱く誓った。

 クラウドファンディングは「READY FOR」サイトから支援できる。2月24日まで。https://readyfor.jp/projects/10999
(清水柚里)