公選主席誕生、映像復元 屋良朝苗氏の肉声、半世紀ぶり 遺族保管、民意訴え 1968年


社会
この記事を書いた人 大森 茂夫

 初の公選主席となった屋良朝苗氏が1968年12月1日に主席に就任した前後を記録したビデオテープを琉球新報がこのほど入手した。「県民の主体性」を掲げ、基地の「即時無条件全面返還」という民意を内外に示した歴史的な主席選挙から来年50年になる。節目を前に、劣化が進んでいたテープを修復してデジタル復元することに成功した。テープには、松岡政保前主席からの事務引き継ぎや記者会見、テレビを通じての県民へのあいさつなどが収録されている。11月10日の主席選挙の後、19日にB52爆撃機の墜落・爆発事故が起きるなど、激動の中で就任を迎えた屋良新主席と、周囲の人たちの緊張した肉声や表情が生々しく記録されている。

琉球政府職員に就任あいさつをする屋良朝苗主席=1968年12月2日、琉球政府第1庁舎前広場

 本紙が入手したのは、当時珍しかったオープンリールのビデオテープ(磁気テープ)5本のほかオープンリールの音声テープ9本。屋良元主席の遺族から寄託された。その中から今回「1968年12月1日屋良行政主席就任記録」「1968年12月 屋良主席就任レセプション記録」というタイトルが付いた2本を復元した。

 「行政主席就任記録」では12月1日の琉球政府への初登庁、2日の琉球政府全職員を前にしたあいさつ、その後のB52問題などの要請のための上京を報じたテレビニュース映像などが収録されている。

 3日に那覇市天久の東急ホテルで開かれた「就任レセプション」の映像では、アンガー高等弁務官や日本政府沖縄事務所の岸昌所長の祝辞も全て記録されている。

 他のビデオテープは選挙前の撮影とみられ「屋良さんを励ます会結成総会録画」(5月28日、琉球新報ホール)、「『明るい沖縄を作る会』結成大会」(6月5日、琉球新報ホール)のタイトルがある。1本には記載がない。

 音声テープも選挙前のものが多く、4月に東京で行われた「屋良朝苗氏を励ます会」や、7月の「明るい沖縄をつくる10万人集会」のタイトルがある。当選直後に行われた美濃部亮吉東京都知事との電話対談、11日の日本外国特派員協会(東京)での記者会見も記録されているとみられる。

 劣化の著しいテープもあり、琉球新報では順次、修復・復元していく予定。(米倉外昭)