強行で島内分断も 石垣陸自着工 住民懸念向き合わず


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仮設の柵や土のうが設置され、工事が始まった陸上自衛隊の駐屯地建設現場=1日午後、石垣市の平得(小型無人機で撮影)

 沖縄県石垣市平得大俣への陸上自衛隊駐屯地の建設工事が1日、始まった。環境影響評価(アセスメント)実施を避けるため、住民の不安は置き去りにされたまま、来週には造成工事も始まる見通しだ。配備に反対・慎重の声は根強く、強行的な着工は島内分断を深める懸念もある。

 2月27日に行われた配備予定周辺4地区住民と防衛省との面談では「抑止力」などの議論を巡る意見の相違だけでなく、生態系への影響や地下水汚染などについて住民側が抱く疑問・懸念に防衛省側が答えられない場面も散見された。それでも面談翌日に資材を搬入した判断は、住民の懸念に向き合う必要はないとの姿勢をあらわにした形だ。

 着工は、県民投票実施前に強行された辺野古への土砂投入と共通する面がある。配備計画の賛否を問う住民投票の条例は住民の直接請求によって提案され否決されたものの、議員提案により再び議会に諮られる予定だからだ。工事を開始することで、住民投票実施自体への諦めムード醸成したいとの思惑が透ける。

 自衛隊配備は着工で節目を迎えたが、今後も住民投票や配備予定地の半分を占める市有地売却に関する審議を控える。着工を機に市民の思いがどう動くのか、市長や議員がその思いをどうくみ取るのか注目される。
(大嶺雅俊)