祝う心意気 進化するウチナー余興


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 「長い(時間が)」「多い(列席者が)」「近い(新郎新婦と両親の席が)」をはじめとする沖縄独特の結婚式に欠かせないのが、余興だ。踊りや歌といった伝統の舞台余興と、パソコン普及によるハイテク化で活気づく映像余興。ここ数年は、余興作品の腕を競う大会が各地で誕生している。舞台余興では、注文を受けて披露宴などに赴くプロ化した余興団体(個人)も複数あり、沖縄の豊かな芸能文化の一角を支える。底に流れるのは、慶事を祝い、人を喜ばせたいという心意気だ。

3連覇の猛者
 毎年秋、うるま祭り会場で開かれる「ひーぷーのにーびち余興王決定戦」。地区予選を勝ち抜いた強者(つわもの)の中、10月に3連覇を成し遂げたのが、県内余興界の猛者「MURU(むる)石川」だ。
 旧石川市(うるま市)出身の幼なじみ、山田祐也さん、玉城慶さん、慶世村憲彦さん、平良剛史さんのオリジナルメンバーに、シニア1人とジュニアチームの3人が加わった。とはいえ、全員同級生の32歳。普段は営業や経理の仕事をする会社員、子育て中の父親の顔を持つ。
 くば笠(がさ)に落ち武者風かつら、全身黒タイツ。真面目と冗談が混ざり合う、一糸乱れぬ切れのある振り付け。琉舞などの伝統も、そこはかとなくちりばめる。
夢は大舞台
 小学校2年生の時から20年の振り付け歴を持つ山田さんが核だ。同級生の若い世代だけでなく、皆が楽しめる余興をつくりたかったという。「若い人は『かぎやで風』を見ない。オバーたちは若い人の余興を見ない。そこで、欲張りだけどみんなに見てほしかった」と山田さん。
 披露宴などへの出張余興もしており、最近では高齢者福祉施設や福祉作業所からも声が掛かるように。人手不足のため4人を追加した。一同、「やってきたことは間違いではなかった」と感じている。夢は大きく「いつか全島エイサー大会、那覇ハーリーに出演したい」とも話している。(文・石井恭子)
(写真・諸見里真利)
 ※むる・いしかわ 旧石川市(うるま市)出身で幼稚園からの幼なじみが結成。県立石川高校時代は「ダパンツ」の名で学園祭に出演。これまで「沖縄にーびち余興王決定戦」で3連覇中。2010年「7色のシークワァーサー」、11年「がんばれ日本」、12年「僕の隣のちんすこう」と毎年オリジナル発表。結婚式や各地の行事で「琉球余興」を披露中。FMうるま(毎週火曜午後9時~)で「MURU石川相談所」放送中。ホームページはhttp://muruishikawa.ti―da.net/

3系統に分類
 結婚披露宴で放映された映像余興の完成度を競う「にーびち映画祭inよみたん」(同実行委主催)。2011年に始まった。第3回となる13年の予選は3月の「沖縄国際映画祭」の中で行われる予定だという。
 実行委員長を務めるFMよみたんの仲宗根朝治代表によると、最近の映像余興には大きく分けて(1)ダンス系(プロモーションビデオ風)(2)光り物系(ペンライト使用)(3)新郎新婦ストーリー系―といった系統がある。服を脱ぐ露出系の余興は減りつつあるそうだ。ビデオ編集の時代は終わり、パソコン編集による高品質の作品が多数派に。仲宗根代表は「沖縄の誇れる映像余興として質のいい作品を残していきたい」と話し、今後に期待している。

時代とともに変化/玉城愛さん(フリーパーソナリティ)
 披露宴の司会を始めたのは13年前から、「ハイサイ新婚さん」(OTV)レポーターも8年目です。年間約50組の結婚式を見ています。2010年に「抱腹絶倒エピソード ああ、沖縄の結婚式!玉城愛 with にーびちオールスターズ編」(ボーダーインク)をまとめました。きっかけは、本土の新郎新婦のリゾート婚で20~30人と客も少なく、バイオリンの余興、司会はほとんどしゃべらないという、沖縄のにぎやかな結婚式とのギャップを経験したことです。
 例えばモーニング娘や氣志團、AKB48、少女時代へと余興は時代を映します。昔は独自の振り付けが主でしたが、最近はネット動画の見本に忠実です。

「第2回にーびち映画祭inよみたん」より。映画祭実行委員会メンバーら=2012年6月10日、読谷村の沖縄残波岬ロイヤルホテル
玉城愛さん