ウミガメ産卵期に 懸命に、命継ぐ営み


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 【糸満】糸満市の海岸で、ウミガメが産卵シーズンを迎えている。20日深夜から21日未明にかけて、2匹のアカウミガメが上陸し、直径約4センチのピンポン玉のような卵を次々に産み落とした。午後11時ごろ、1匹目のアカウミガメがゆっくりと海岸に上陸し、産卵場所を探した。

2匹目は30分後に海岸に姿を現した。(文・赤嶺玲子、写真・仲本文子)

 それぞれ産卵場所を決めると、後ろ足を器用に使い深さ約50センチ~1メートルの産卵巣と呼ばれる穴を掘った。砂に体を沈めるボディーピットという動作の後、苦しげに「ゴーフッ、ゴーフッ」と息を吐き、後ろ足をくいっと持ち上げて息み、産卵した。
 産卵後は穴を砂で埋め、大きく手足をばたつかせて周囲に砂をまき散らしカムフラージュ。約2時間の産卵を終え、疲れ切った様子で午前1時半ごろに海に帰った。卵は約2カ月でふ化する。
 長年、糸満市でウミガメの保護と調査活動をしている小林茂夫さん(73)と河野真繁さん(57)らが、甲羅の長さと卵の数を確認したところ、1匹目は甲長86・5センチ、甲幅69センチで123個、2匹目は甲長84センチ、甲幅74センチで134個を産卵した。
 ウミガメの産卵観察は肉眼と赤外線望遠鏡を使って行われる。カメは光に敏感なため、懐中電灯などで照らすと、おびえて上陸できず、海に戻ってしまうからだ。上陸できないカメは海中で卵を産み、卵が他の動物の餌になる場合もある。
 小林さんは「開発などでカメが産卵できる海岸が少なくなっている。夏は浜辺で頻繁にビーチパーティーや花火が行われるが、自然界の生命の営みを守るために、モラルを考えてやってほしい。産卵を発見してもライトで照らさず、そっとしてほしい」と呼び掛けた。

★通常版

月明かりに照らされ、産卵するアカウミガメ=21日未明、糸満市
ピンポン玉のような卵を次々と産み落とす
産卵場所が分からないよう、砂をかけてカムフラージュ
産卵を終え、ゆっくりと海に帰っていくアカウミガメ
卵を保護するため、波打ち際から遠い安全な場所に卵を埋め戻す地元ボランティアたち