ルポ・国頭安波・宇嘉川を歩く 近隣でヘリ着陸帯計画


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 東村高江に続き、国頭村安波で新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設が予定されている。予定地近くを流れる宇嘉川を13日、訪れた。ヘリパッドは完成後、米海兵隊によって垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの運用が予定されている。

予定地の入り口や裏口で工事に反対して座り込みを続ける市民らに対し、防衛省は強制排除の準備に入った。新たな緊張を迎える現場の目と鼻の先には、原始の森と川が育む湿潤な自然が広がり、絶滅危惧種をはじめとする無数の動植物が生きている。
 東村高江で昆虫の調査を続ける宮城秋乃さん(日本鱗翅(りんし)学会自然保護委員)の案内で、最年少の1歳児を含めた18人が参加した。13日昼、たどり着いた宇嘉川中流は、冷たく澄んだ水をたたえていた。上流に向け川を歩くと、岩や石がごろごろと転がる。木漏れ日が差す程度のほの暗い川べりを覆うのは、空へと伸びるイタジイなどの木々だ。岩場にはノボタン科のハシカンボクが桜色の花を付け、開花期を迎えていた。
 目を凝らすと、準絶滅危惧種の小さなチョウ、リュウキュウウラボシシジミが白い花の蜜を吸っている。固有種のオキナワイシカワガエルも、つやつや光るその身をこけむす岩の上に置いていた。冷たい川底には、テナガエビやハゼがじっとしている。
 上流に向かうと東村高江側に当たる左岸、植物の間に朽ちかけたような黄色い表示が立ち、米海兵隊を指す「USMC」と刻んでいた。大陸から切り離された約200万年前から独自の豊かな固有種が進化を遂げてきた原始の森。その向こう、安波から高江にかけての森は沖縄戦後、基地に接収され、北部訓練場の一部になっている。
 絶滅危惧種のヤンバルクイナやノグチゲラも生息する安波の森に、高江に既に完成した2カ所に続き、防衛省は新たな四つのヘリパッド建設を進めている。宇嘉川河口は1996年の日米合同委員会(SACO)最終合意により、すでに米軍への提供水域となっている。
 綿毛が川面(かわも)にふわりと降りた。宮城さんは「(江戸時代以降、民間伝承の中で謎の生物と呼ばれる綿毛状の物体)ケサランパサランだ」と笑う。オオゴマダラは左右の岸を行きつ戻りつ、悠々飛んでいた。(石井恭子)

米海兵隊ヘリパッドの建設予定地となっている森を流れる宇嘉川=13日、国頭村安波の宇嘉川
固有種のオキナワイシカワガエル=13日、国頭村安波の宇嘉川