沖縄返還密約事件


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄返還交渉が大詰めを迎えた1971年、毎日新聞の西山太吉記者が米側が負担すべき基地の原状回復補償費4百万ドルを日本側が肩代わりする密約の存在を報じた。警視庁は72年、西山氏に密約を裏付ける電信文を渡した外務省の女性事務官と西山氏を国家公務員法違反容疑で逮捕した。
 マスコミは当初一斉に逮捕を批判したが、起訴状で西山氏の取材について「情を通じ」と指摘されると問題が男女のスキャンダルにすり替えられ、密約疑惑は不問に付された。
 東京地裁は取材行為を正当として西山氏を無罪としたが、東京高裁は執行猶予付き逆転有罪判決、最高裁で有罪が確定した。2000年以降、密約を証明する米公文書が次々と発見された。提訴後の06年には当時交渉を担当した吉野文六・外務省元局長が密約を認めたが、政府は今も密約を否定している。