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<2023年県内年末回顧>古典芸能 盛んな組踊コンテンツ化


<2023年県内年末回顧>古典芸能 盛んな組踊コンテンツ化 国立劇場おきなわ主催公演の「湛水流の美」=5月27日、浦添市(同劇場提供)
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 コロナ明け元年ともいえる2023年、延期や我慢を強いられてきた公演が一気に劇場へ帰ってきたように感じる。年の初めは伝統組踊保存会の恒例『新春組踊大公演』で幕を開けた。年間で開催された発表会・独演会は枚挙にいとまがないが、個人的に特筆すべきは大湾三瑠『究道無限』と宮里和希『鳴(な)り響(とぅゆ)み鼓(ちぢん)音(おと)羽(ね)』である。前者は、ストイックな技芸はもちろん、公演として隅々まで行き届いていた印象。後者は、太鼓を打つだけで会場の緊張も歓喜をも自在に支配する、太鼓愛にあふれた舞台だった。

 『歌鎖(うたぐさり)』『蓬莱(ほうらい)』『いろゑがき』など流派を超えた同世代が創る舞台も人気で、佐辺良和・仲村逸夫・池間北斗・入嵩西諭の4人が昨年結成したユニット「古典企画」は、4月の旗揚げ公演『夜の琉球音楽会』で観客を楽しませた。

 新作組踊は鈴木耕太作『鶴亀の縁』、仲嶺良盛作『麻氏日記(まうじにっき)』、東江裕吉・新垣悟・比嘉侑子作『能羽の縁(ぬふぁぬえにし)』などが初めて上演された。

 国立劇場おきなわ主催公演では『湛水流の美』と『新進舞踊家の会』に劇場らしさが光った。前者は湛水流の魅力を存分に提示し、後者はフレッシュな技芸を見せるとともに、締めの演目に日傘踊りを組むなど観客を沸かせて終わるだけではない構成の妙が観客をうならせた。田里朝直没後250年にちなんだ『大城崩(うふぐしくくじり)』『万歳敵討』2作同時上演も忘れてはならない。

 受賞関係では、3月に芸術選奨文部科学大臣賞に志田真木、松尾芸能賞新人賞に田渕愛子が選ばれ、12月に喜瀬慎仁が文化庁長官表彰を受けた。最大のニュースは、故照喜名朝一に替わる大湾清之の人間国宝認定だろう(10月)。

 そして、横浜能楽堂では「中締め」特別公演の『琉球芸能六〇〇年』、国立劇場(東京)は閉場前のさよなら公演として『組踊と琉球舞踊』、国立能楽堂では開場40周年記念の『能と組踊』が上演されるなど、国指定重要無形文化財として琉球芸能が県外でも大きな役割を果たした。

 他ジャンルの古典芸能では、首里城復興を願って上演された創作舞踊劇『首里』は能と組踊の合作舞台であった。なはーとの松竹大歌舞伎と木ノ下歌舞伎の組み合わせ上演も、新旧のアプローチで新しい観客を創出する面白い試みだった。

 それにしても組踊のコンテンツ化がめざましい。写真集「清ら星たち」出版は言うまでもなく、映画化した『シネマ組踊 孝行の巻』全国公開、組踊フェイスパック、組踊かるたの発売、組踊たいそうや組踊漫才の実施などの広がりを見せた。来夏は琉神マブヤーとのコラボという発表もあり、新たなメディアミックスが成功するか注目される。

 来年は国立劇場おきなわ20周年で1年が始まる。新しい歴史の一歩に期待したい。

 (大野順美、琉球芸能プロデューサー・一般社団法人ステージサポート沖縄代表理事)