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組踊保存会「忠臣義勇」上演 国立劇場おきなわ 名護市宮里に伝承


組踊保存会「忠臣義勇」上演 国立劇場おきなわ 名護市宮里に伝承 豊年祭に誘い出した大里之按司(右端・川満香多)を討ち取る仲嶺之按司(左端・仲村圭央)と川崎之比屋(左から2人目・石川直也)ら=3月10日、浦添市の国立劇場おきなわ
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 伝統組踊保存会による定期公演「忠臣義勇」が3月10日、浦添市の国立劇場おきなわであった。名護市宮里に伝承された組踊の一つで、二代目親泊興照が復活上演に関わった作品。テンポの速いあだ討ち物語を、国指定重要無形文化財「組踊」保持者を中心に好演した。立方責任者は真境名律弘、地謡責任者は山城暁。

 大里之按司(川満香多)に討たれた仲嶺按司。その忠臣である栄野比大主(大湾三瑠)は、難を逃れた仲嶺按司の子である仲嶺之若按司(仲村圭央)と思姉(宮城茂雄)きょうだいを探していたが会えず、1人で大里之按司を討とうとするも捕らわれてしまう。一方、きょうだいは、栄野比大主の子である川崎之比屋(石川直也)に出会い、あだ討ちの計画を立てる。大里之按司を豊年祭に誘い出して討ち取り、栄野比大主を救い出す。

 捕らわれた栄野比大主と大里之按司のやりとりが緊迫感があり、見応えがあった。大里之按司に一歩も譲らず、あだ討ちの意思を伝える場面や、捕らわれて舞台から下がる間際で抵抗する場面など、大湾の所作や唱えで栄野比大主の気迫や仲嶺按司への忠誠心が全身から伝わった。

 豊年祭の演舞からあだ討ちへ流れるように移る場面に目が離せなかった。仲嶺之若按司や川崎之比屋と共に、豊年祭に出演した踊り子らも立ち回りに加わり、にぎやかに展開した。栄野比大主を救い出した場面で流れた上間克美の「東江節」が伸びやかで、緊迫した場面が続いた物語を和らげた。

 (田吹遥子)