沖縄の伝統工芸「琉球漆芸」の技術継承や産業振興を支援する「りゅうぎん琉球漆芸技術伝承支援事業」(琉球銀行主催)の2023年度復刻作品完成報告が7月26日、県庁で行われ、琉球漆芸に従事する製作部員3人が玉城デニー知事にこれまでの成果を披露した。
23年度は4人の製作部員が約1年をかけて、県指定有形文化財「黒塗雲龍螺鈿椀」を復刻した。曲面への螺鈿加飾や伝承が途絶えていた膠(にかわ)接着など難易度が高い課題もあったが、部員らは専門家や講師の助言を受け、黒漆地に鮮やかな光沢を放つ豪華絢爛(けんらん)な椀をそれぞれ完成させた。
県立芸術大大学院後期博士課程の嘉数翔さんは「沖縄の特産品である夜光貝を3次元の面に、膠で張ることに苦心したが、学びの多い機会になった」と振り返った。
県立芸術大工芸専攻助手の島袋香子さんは「部員同士で意見交換しながら製作したため、たくさんの気づきがあり勉強になった」とし、同大非常勤講師の上江洲安龍さんは「今回学んだことを生かして今後の作品製作に生かしたい」と決意を新たにした。
玉城知事は、若い人たちが卓越した技術を身に付けながら優れた伝統工芸を作り育て、継承していくことは非常に重要だと強調した上で、「県としても文化事業により力を入れ、バックアップしていきたい」と激励した。
4人の製作部員は24年度、これまでに習得した技術を生かして新商品の開発に取り組む。
4人の手がけた黒塗雲龍螺鈿椀は、浦添市美術館で9月8日まで開催している「あつまれ!龍 令和五年度新収蔵品展」で見ることができる。
(当銘千絵)