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織り成す沖縄と韓国 佐喜眞美術館 14人「歴史と平和」テーマ


織り成す沖縄と韓国 佐喜眞美術館 14人「歴史と平和」テーマ 自身の作品「摩文仁の風」(左)について説明するホン・ソンダムさん=8月28日、宜野湾市の佐喜眞美術館
この記事を書いた人 Avatar photo 当銘 千絵

 韓国の光州および全羅南道を拠点とする作家8人と、沖縄を拠点とする作家6人による光州市立美術館企画展「互いに織り成す物語展」が23日まで、宜野湾市の佐喜眞美術館で開かれている。出身や世代の異なる14人が「歴史と平和」をテーマに、自国を取り巻く苦難の歴史や、希求する平和像などを多彩な芸術形式で表現している。

 1910年の日韓併合条約以降、35年間にわたり日本の統治下にあった韓国。45年の日本敗戦により植民地支配から解放された後も長らく軍事政権が続き、光州市では80年、民主化を求める多くの市民や学生が政府の弾圧により死傷する光州事件が起きた。一方、沖縄は凄惨な地上戦を経験した上、戦後79年たった今もなお過重な基地負担を強いられる現状が続いている。

イ・ジュンソクさんの「それぞれの心に花を咲かせなさい」

 本展は、毎年海外の都市を訪れ地域間交流を行っている光州市立美術館が、帝国の支配と国家権力による暴力を経験した二つの都市で生きる作家だからこそ湧き上がるメッセージを、芸術を通して広く発信しようと企画した。

 韓国から参加したイ・ジュンソクさんは、画面を埋め尽くすヒマワリの花と光州事件の犠牲者、そして現在を生きる人々を交差させた作品「それぞれの心に花を咲かせなさい」を発表した。同氏は学生時代に光州事件を経験して以来、生き延びた者の責任として事件の実相を後世へ伝えようと、人権や平和をテーマとした作品を作り続けている。

 韓国を代表する民衆美術の大家、ホン・ソンダムさんは、沖縄戦中に摩文仁の断崖から身を投じた住民の犠牲と、光州事件に献身した市民をオーバーラップさせた大作「摩文仁の風」を披露。絶望の崖を落ちる犠牲者がチョウに変身し、人権・民主・平和を掲げた光州市民へと連なる生命・平和の物語を表現した。

 沖縄側から参加した彫刻家の金城実さんは、辺野古新基地建設を阻止するべく共に現場で闘ってきた亡き友人らを刻んだ「抵抗の獅子たちよ!」を発表した。

金城実さんの「抵抗の獅子たちよ!」

 県立芸術大大学院4年のHAYATO MACHIDAさんは、生まれ育った沖縄の両面性をカラフルな絵画で表現。米軍基地内で開かれるきらびやかなフェスティバルに心を踊らせていた昔の自分と、基地という存在の本質を知った後の自身の葛藤を作品に投影した。

 8月28日、佐喜眞美術館であったオープニングイベントであいさつした光州市立美術館のギム・ジュンキ館長は「今後も本展に参加した作家だけでなく、双方の幅広い作家が継続的に交流を続け連帯していくことが、平和の希求につながるはずだ」と期待を寄せた。

 企画展にはその他、韓国からイ・サンホ、ハ・ソンフア、キム・ファスン、イ・セヒョン、パク・ソンワン、ノ・ウニョン、沖縄からは仲間伸恵、与那覇大智、石垣克子、平良孝七の作品を展示している(敬称略)。午前9時半~午後5時、毎週火曜は休館。一般900円、大学生・70歳以上のシニア800円、中高生700円、小学生300円。

 (当銘千絵)