prime

【寄稿】前城淳子 暮らしと祈りの世界知る<琉大付属図書館企画展「琉大資料がつなぐあやはし・うるまの今昔」に寄せて>


【寄稿】前城淳子 暮らしと祈りの世界知る<琉大付属図書館企画展「琉大資料がつなぐあやはし・うるまの今昔」に寄せて> 勝連城(明治期撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 外部執筆者

 うるま市は沖縄本島中部の太平洋側、金武湾と中城湾に面した場所に位置している。勝連半島から海中道路や橋によって平安座、浜比嘉、宮城、伊計、藪地の島々が結ばれ、美しい景観を生み出している。このうるま市で、10月に琉球大学付属図書館企画展「琉大資料がつなぐあやはし・うるまの今昔」が開催されることとなった。

 企画展では琉球大学が所蔵する資料の中から、うるま市に関連するものが展示される。例えば、豊かな海とそこに生きる人々の暮らしを知ることのできる資料、タコや貝の標本、それを採るための道具である。津堅貝塚出土品からは、今から約1500~1700年前の人々が自然を巧みに利用して暮らしてきた様を知ることができる。また、神々に祈りを捧(ささ)げ神の守護と豊かな恵みを得ることも、生きていく上で欠かせない。1960年代に中山盛茂氏が調査した各地の祭祀(さいし)やノロの写真からは、人々の祈りの世界をうかがい知ることができるだろう。

 うるま市と言えば勝連城主阿麻和利を忘れてはならない。中山を攻略することを企てた阿麻和利は中山の史書に逆臣として記される。それが組踊『二童敵討』に受け継がれ、悪役のイメージが強化されていく。江戸後期の戯作者・滝沢馬琴の『椿説弓張月』に登場する阿公は、この阿麻和利がモデルとされる。今回の企画展では『椿説弓張月』と歌舞伎の上演場面を描いた浮世絵が展示される。悪役とされる一方で、阿麻和利は英雄でもあり続けた。これまで逆臣として扱われてきた阿麻和利を「沖縄最後の古英雄」として再評価した伊波普猷のオモロ研究の成果も展示される。さまざまに描かれる阿麻和利像を、資料を通して見比べるのも楽しいだろう。

 期間中はセメント瓦ワークショップ(12日)や伝統タコ釣り漁具のキーホルダー作り(26日)も企画されている。島々を結ぶあやはしを渡り、会場へ足を運んでいただければ幸甚だ。

(琉球大学人文社会学部教授)


 「琉大資料がつなぐあやはし・うるまの今昔」は10月5日から27日まで、うるま市与那城のうるま市立海の文化資料館で開催される。開館は午前9時~午後5時、月曜休館(月曜が祝日の場合は翌日が休館)。入場無料。