有料

中国市場、日本に逆風


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 世界有数の規模を誇る中国化粧品市場で日本ブランドへの逆風が続いている。日系メーカーは積極的に市場参入し顧客獲得を進めてきたが、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を巡る風評被害で買い控えが拡大。2024年には中国当局に商品の原料や「レシピ」に当たる成分割合の開示が必須となる予定だ。業界は「企業秘密が漏れる」と危機感を抱いている。
 中国国営メディアによると中国の化粧品市場は23年に5千億元(約10兆円)規模に成長。日本のほか韓国や欧州のメーカーがしのぎを削る。国産化政策を進める習近平指導部の後押しで中国企業もブランド力を高め、低価格化や品質向上を図っている。
 今年8月の処理水海洋放出後には中国のインターネット上で日本への批判的な投稿が相次ぎ、日系商品の買い控えが広がった。交流サイト(SNS)で多数のフォロワーを持つ「インフルエンサー」による化粧品紹介や宣伝が減少し、日系企業の売り上げに影響。
 中国の医薬品規制当局は24年1月から厳格化した管理規定に沿って、化粧品に使用されている原料や詳細な成分の割合の全面開示と登録を企業側に要求する方針。
 来春以降には化粧品の容器の素材にまで規制が及ぶ可能性があり、日本政府は「日系企業は中国市場への進出に及び腰になるだろう」と指摘する。(北京共同=杉田正史)