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中国 企業を越境調査 愛知の工場、ネットで 化粧品「ホーユー」 輸入を停止


中国 企業を越境調査 愛知の工場、ネットで 化粧品「ホーユー」 輸入を停止 化粧品大手「ホーユー」の瀬戸工場・物流センター=28日午後、愛知県瀬戸市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 中国の医薬品規制当局がヘアカラーを手がける化粧品大手「ホーユー」(名古屋市)の愛知県の工場をオンラインで調査し、生産工程の問題点を指摘した上で商品の輸入を停止したことが28日分かった。オンラインとはいえ国境を越えて日本の工場を中国当局が直接調査するのは異例。外資への監視強化の一環とみられる。中国への情報流出の懸念もあるとして日系企業の間で警戒感が強まっている。
 日本政府関係者は、監視が強くなればなるほど外資の対中輸出が抑制的になり、中国の国産品に有利になると指摘。習近平指導部があらゆる産業分野で国産化を進めていることが背景にあるとの見方を示した。
 中国国家薬品監督管理局は11月16日、ホーユーの商品について、生産管理に関する法律に違反する疑いがあると公表。白髪染めの生産工程が技術上の要件を満たしていないと指摘した。
 日系企業の中国拠点が当局の調査を受けることはあるが、関係筋によると、同管理局はホーユー側と日程調整をした上で、愛知県瀬戸市の工場の生産工程をオンラインで確認する調査を実施した。強制ではなく任意調査の形で行われており、国家主権の侵害には当たらないとみられている。ただ中国事業を継続したいホーユー側が調査を拒否するのは困難だったもようだ。
 同管理局は白髪染めの生産工程が中国への報告資料の内容と異なるなどとして対応を求めたという。ホーユーは共同通信の取材に「当局の指導に基づき対応していく」とコメントした。
 東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に伴う日本製品の買い控えやスパイ容疑による邦人拘束で、中国での日系企業の事業環境は悪化している。当局が他企業にも調査を恣意(しい)的に行うことが懸念され、生産工程の調査を通じて技術や情報が流出する恐れもある。日系企業の中国ビジネスはさらに萎縮しそうだ。(北京共同=杉田正史)