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遠さが魅力「ボーダー」旅 北海道、沖縄…自治体促進へ 与那国「ついでに海外」も


遠さが魅力「ボーダー」旅 北海道、沖縄…自治体促進へ 与那国「ついでに海外」も 境界地域研究ネットワークJAPANの加盟自治体
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 北海道や沖縄などの自治体が、国境をはじめとした境界地域を訪ねる「ボーダーツーリズム」普及に取り組んでいる。首都圏からの遠さを逆手に取り、異文化とのつながりを観光資源と位置付ける。世界的な新型コロナウイルス感染拡大も落ち着き、関係者は「地域活性化のきっかけになれば」と本腰を入れる。
 「思ったより近い」。2023年10月下旬、北方領土周辺地域を巡るツアーで北海道標津町などを訪ねた35人の参加者は、隣の羅臼町にある展望台で約25キロ先に浮かぶ国後島に歓声を上げた。
 自治体や研究者らでつくる「境界地域研究ネットワークJAPAN」が主催。羅臼町の郷土資料館で5~9世紀に地域で栄えたオホーツク文化に触れたほか、元島民2人の講演では、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて四島との交流が中断している現状を学んだ。
 参加した名古屋市の村上周子さん(52)は「国際情勢の影響を肌で感じた」と話した。ボーダーツーリズムの取り組みは、北海道大スラブ・ユーラシア研究センターの岩下明裕教授らが11年に始めた。「四方を海に囲まれた日本は、国境の意識が希薄になりがち」と岩下教授。「実際に足を運び歴史や文化のつながりに触れ、スタディーツアーに活用可能だ」と力説する。
 国境だけでなく、日本と琉球王国双方と交流があり、独自の文化が育まれた鹿児島県の奄美群島なども対象となり得る。
 これまで北海道稚内市とロシア・サハリン、ロシアと中国東北部を巡るツアーを開催。コロナ禍で国内外の渡航が困難な時期もあったが、徐々に活動が活発化している。
 長崎県対馬市では23年2月、島と韓国・釜山を結ぶ高速船が約3年ぶりに再開。同11月末までに約10万4千人が訪れた。18年の約41万人には及ばないが、対馬観光物産協会は「客足は徐々に戻りつつある」と話す。
 与那国町も24年3月、高速船の台湾航路実証実験を予定する。西表島(竹富町)などの世界自然遺産地域に近く、訪日客に加え、国内向けにも「ついでに海外に立ち寄る」プランを提案する。与那国町企画財政課の田島忠幸課長は「日本と台湾の新たな結節点をつくりたい」と意気込む。