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人材投資、技術革新を/企業トップ 賃金上昇通じ成長図る  


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 経済3団体の新年会で企業トップらは、人材への投資や技術革新に意欲を示した。異口同音に唱えたのは「デフレはこりごり」との思い。能登半島地震の発生など衝撃的な幕開けとなった2024年は、日本経済にとって賃金の上昇を通じ、成長を実現できるかどうかの正念場となる。

風向き
 「30年続いたコストカット型経済から、所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行する大きなチャンスを迎えている」。岸田文雄首相は防災服に身を包み、東京都内のホテルへ詰めかけた企業トップに賃上げの継続を訴えた。
 バブル経済崩壊後に業績が悪化した日本企業は人件費を抑え続けた。だが「ここに来て間違いだったと気付き始めた。付加価値が正当に評価されないし、報われない」(三井不動産の植田俊社長)との発言が出るなど風向きは変わりつつある。
 植田氏は「デフレにおさらばできるか勝負の年だ」として10%の賃上げを表明。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長と、大和証券グループ本社の中田誠司社長は、7%の賃上げを目指すと明言した。24年の春闘は、企業規模や業績の明暗で差が広がることも想定されるが、中田氏は「できるところからやるべきだ」と意気込んだ。
 今年の景気は「山登りの中腹だ。デフレ脱却の山を少しずつ登っていると皆が実感できる経済を目指すべきだ」(JR東日本の深沢祐二社長)といった見方が多かった。

「裏金クリアに」
 地震の影響を懸念する声もあった。すかいらーくホールディングスの谷真会長は「北陸は魚介類の宝庫だ」とし、地震により集荷作業が極めて難しくなると説明した。
 東芝は、自動車向けなどのパワー半導体を生産する石川県能美市の工場が被災した。島田太郎社長は「全面再開の時期は分からない。全社的に人材を派遣して復旧に当たっている」と話した。
 政界は23年から、自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題で揺れる。首相は新年会で「政治の信頼回復に先頭に立って取り組む」と訴えたが、「今回の問題は絶対に認められない。クリアにしてもらうまでは参加できない」(ローソンの竹増貞信社長)と厳しい声が聞かれた。