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QR30年 決済で身近に デンソー開発、鉄道設備にも


QR30年 決済で身近に デンソー開発、鉄道設備にも 決済用のQRコードなどが置かれた小売店のレジ=2023年12月、名古屋市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自動車部品大手デンソーが開発した「QRコード」が、今年で30年を迎える。まずは自動車部品や食品の商品管理といった産業用から普及。現在は国内外でスマートフォンのコード決済で利用されることが増え、生活に身近な存在になった。鉄道のホームドア設置に伴う車両改修費を、通常の740分の1に抑えたという意外な使われ方もある。
 QRコードはデンソーの応用機器技術部門(現デンソーウェーブ)が開発を手がけた。かなや漢字1817文字分の容量があり、コードの3割が汚れたり破損したりしても使える。正面だけでなく、斜めからでも読み取ることができる。
 スマホの普及後はイベントの入場券や交通機関の乗車券に使われるほか、2018年からは「PayPay(ペイペイ)」など決済アプリでの利用が急増。経済産業省によると、バーコードも含むコード決済の22年の国内決済額は7・9兆円と、キャッシュレス決済で先行していたSuica(スイカ)など電子マネーの6・1兆円を初めて上回った。
 経産省の担当者は、他のキャッシュレス決済に比べて店舗の負担する費用が割安なことが利用の伸びた一因だと分析する。読み取り用のQRコードの紙をレジ横に置くだけで導入できる。
 世界でも広がり、世界最大のスマホ決済「アリペイ」の中国での決済額は20年6月末までの1年間で118兆元(2362兆円)に上った。飲食から交通まで日常のほとんどの支払いで利用可能で、上海に約4年住む会社員、鈴木宏さん(29)は「現金は全く持ち歩かない」と話す。
 19年には都営地下鉄浅草線で、QRコードで駅のホームドアを開閉する仕組みが採用された。5割が欠けても読み取れる新型のQRコードを車両に貼り、ホームに設置したスキャナーで読み取ることで開閉を制御する。
 現状は車両とホームに無線装置を付ける方式が一般的だが、QRコードに代えることで車両改修費用を約20億円から約270万円に抑えた。神戸市営地下鉄や小田急電鉄などでも導入が進む。
 

QRコードが貼られた都営地下鉄浅草線の車両とホーム上部に設置されたスキャナー(東京都交通局提供)
決済用のQRコードなどが置かれた小売店のレジ=2023年12月、名古屋市