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国内防衛事業 相次ぎ強化 国際紛争助長の恐れ


国内防衛事業 相次ぎ強化 国際紛争助長の恐れ 防衛関連事業の売上高と目標値
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 国内メーカーで防衛事業を強化する動きが相次いでいる。ここ数年は事業撤退が続いていたが、防衛費を2023年度からの5年間で約43兆円に増やす政府方針が追い風となった。各社は受注拡大に向け数百人規模で人材確保を進めており、収益力の向上につなげたい考えだ。
 防衛事業を巡っては、輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」に基づき、国産完成品が23年10月に初めて輸出されるなど販路は拡大。さらに政府は、三原則の運用見直しで輸出の大幅緩和に踏み切っており、メーカーの動きを後押ししそうだ。
 三菱重工業は23年11月、防衛事業説明会を開き、24~26年度に売上高が年1兆円と、現状から倍増するとの見通しを発表。「国家安全保障の機運が高まっている」とし、ミサイル製造や次期戦闘機の開発に積極投資する。
 川崎重工業は対空ミサイル用エンジンなどの受注増を見込み、売上高を22年度の約2400億円から30年度に5千億~7千億円まで増やす計画。IHIも防衛事業に300人以上を増員予定だ。三菱電機は23年10月、フィリピンに警戒管制レーダー初号機を納入し、今後、2基目を目指す。
 防衛装備品は従来、顧客が自衛隊に限られた。しかし、14年に閣議決定された三原則は条件付きで輸出を認め、納入先は海外にも広がった。
 NECは軍事技術の一般向け製品への活用を視野に入れる。森田隆之社長は「今後の防衛は先端技術が重要だ。量子暗号などは(一般向け)民生でも大きな市場になる」と期待。23年度に430人の増員を実施する。
 ただ、武器の輸出は国際紛争を助長する恐れがあり、政府の三原則見直しには国民への説明不足との批判がある。流通経済大の植村秀樹教授(安全保障論)は、防衛産業を支える政府の取り組みは一定程度必要だと指摘する一方、「平和国家としての在り方を含め、政府は産業の安定的な維持について透明性のある議論をすべきだ」と話す。
 日本の防衛産業 主に自衛隊へ納める戦闘機や通信システムなどの防衛装備品を手がける。帝国データバンクによると、関連企業は4395社(2022年)。中小企業の撤退が相次ぎ、13年から173社減った。利益率の低さが原因とされ、政府は、品質や納期管理などの企業努力に応じて利益率を調整する仕組みを導入した。23年6月には防衛産業を支援する生産基盤強化法が成立し、製造工程の効率化や供給網強化のための経費は、政府の負担となった。