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SBI証券に処分命令 商取法違反「悪質性高い」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 金融庁は12日、新規株式公開(IPO)銘柄の株価操作を図り、金融商品取引法に違反したとして、インターネット証券最大手SBI証券に対し一部業務停止命令を出した。IPO株の買い付けの勧誘を同日から18日まで1週間停止させる。役員が主導し、市場の信頼を傷つける行為で悪質性が高いと判断した。
 個人向けの株や投資信託の売買取引は対象としない。SBI証券は今月始まった新たな少額投資非課税制度(NISA)の口座開設を呼びかけており、こうした業務にも処分は影響しない。
 金融庁は業務改善命令も出し、経営陣に責任の所在を明確化し、不正取引を防止するための内部管理態勢の強化を求めた。SBI証券は「再発防止と信頼回復に努めていく」とするコメントを出した。業務停止中にIPOを予定する企業はないという。金融庁によると、SBI証券は、主幹事を務めたIPO3銘柄で新規上場後に初めて売買が成立した株価を指す「初値」をつり上げようとした。機関投資家9社と個人投資家174人を勧誘し、相場を変動させると知りながら、初値が公開価格を下回らないように買い注文を受けた。
 証券取引等監視委員会が昨年12月、金融庁に行政処分を勧告した。監視委は、SBI証券がIPO業務の強化で収益源の多角化を狙い、不正行為に及んだとみている。
 証券業界はNISA口座の獲得に注力している。今回の件で業界の信頼が揺らげば、「貯蓄から投資」への機運に逆風となる恐れもある。

<用語> 新規株式公開(IPO) 証券取引所で企業の株式を投資家が自由に売買できるようにすること。IPOは英語の「Initial Public Offering」の頭文字。新規株式の発行価格である公開価格は、主幹事となった証券会社が機関投資家の意見などを踏まえて設定する。上場後最初に取引が成立した値段を初値といい、人気が高い銘柄は公開価格を上回ることが多い。反対に人気がなかったり、外部環境が変化したりすると公開価格を下回る場合がある。