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ネット中傷 迅速削除 法案提出へ 運営業者に通知義務


ネット中傷 迅速削除 法案提出へ 運営業者に通知義務 違法・有害情報相談センターへの相談件数の推移
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 交流サイト(SNS)で他人を中傷する投稿の削除などを迅速、透明化する関連法の改正案の概要が13日、分かった。X(旧ツイッター)やインスタグラムなどを運営する巨大IT企業を念頭に、削除要請に応じたかどうかや、その理由を一定期間内に申請者に通知することを義務付ける。政府が今月召集の通常国会に法案を提出する。
 削除の基準を示す指針の策定と公表や、削除申請の窓口を利用者に分かりやすい形で示すことも求める。プロバイダー責任制限法を改正する。同法は2022年にも改正法が施行され、投稿者への損害賠償請求に必要な情報開示手続きが簡素化された。ただ訴訟の時間や費用の壁は依然高く、迅速な削除を求める声が多かった。
 ネット上での中傷は、自殺につながる場合もある深刻な問題だ。総務省が運営を委託する「違法・有害情報相談センター」には、22年度に5745件もの相談があった。相談を受けたサービスはXやユーチューブなどが多くを占める。
 運営企業側も担当者や人工知能(AI)による監視、削除などに取り組んでいるが、中傷投稿は止まらず苦慮している。ユーチューブでは、規定に違反するとして23年7~9月に削除した国内の動画は10万件以上に上る。動画制作者の指定した単語を「NGワード」としコメント欄に表示しないようにしたり、制作者が視聴者に望む対話の在り方を掲載したりできるようにする機能もある。
 ユーチューブ日本代表の仲條亮子氏は「動画の削除はスピーディーに簡単にできると思われるが、実際は本当に複雑だ」と実情を明かす。公平性の確保や、表現の自由を萎縮させるリスクも考慮した上での判断を迫られているという。
 人気ユーチューバーを抱える事務所UUUM(ウーム)では、中傷があった際、相手への警告にとどめるか、警察に相談するかどうかなどを迅速に決める体制を取る。対応事例は積極的に公表している。中傷対策の責任者を務める竹川洋志氏はこうした発信を「抑止力にしたい」としている。