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日本の製造業、揺らぐ信頼 /会社トヨタ問われる責任 ダイハツ品質不正  


日本の製造業、揺らぐ信頼 /会社トヨタ問われる責任 ダイハツ品質不正   ダイハツ工業の本社工場=大阪府池田市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ダイハツ工業の品質不正問題は、国土交通省が3車種の「型式指定」認証を取り消す処分へと発展した。国の試験制度にとどまらず、日本の製造業に対する信頼が揺らぎかねない事態だ。止まった国内での完成車生産の再開は見通せず、経営への影響は必至だ。親会社トヨタ自動車の責任も問われそうだ。(1面に関連)

短期開発が目的化
 是正命令書を受け取ったダイハツの奥平総一郎社長は「大変な不正だと受け止めている。組織体制のあり方をしっかり検討し(再発防止策を)1カ月以内に報告したい」と険しい表情で声を絞り出した。
 記者団の取材に短期開発を推し進めた結果、機能不全を招いたと振り返り「そうせざるを得ない風土を経営が醸成した」と改めて認めた。
 ダイハツはトヨタブランドの車を年間60万台規模で供給する。厳格な生産管理で知られるトヨタの要求を断れなかったのかと問われると、奥平氏は「ダイハツとしてやれる仕事量を見誤った」と力なく答えた。トヨタの佐藤恒治社長は東京都内で取材に応じ「短期開発は魅力ある商品を届けるための手法だったが、いつしか目的化してしまった」と認め、「お客さまを不安にしているのは心から反省すべきことだ」と語った。

極めて悪質
 斉藤鉄夫国土交通相はダイハツの不正には「極めて悪質なものが含まれていた」と指摘し「わが国の製造業への信頼をも傷つけるものであり、極めて遺憾だ」と断じた。
今回は試験車のエアバッグをタイマーで作動させるという加工をしたことが取り消される要因となった。
 型式が取り消されると事実上、その車の生産は不可能になる。国交省は指定を取り消した3車種の他、42車種で適合性試験を進めている。取り消し車種が拡大するかは今後の懸案事項だ。
 過去の事例では、エンジンの排出ガスや燃費性能の試験データを改ざんしていたトヨタ系の日野自動車が型式を再申請して一部は出荷を再開している。ただ、1年近い時間を要しており、簡単ではない。
 ダイハツが再申請するかは不明。現在は1月末までとしている国内での完成車の生産停止は長引く可能性が大きい。
 豊田自動織機を含め、型式が取り消された不正はいずれもトヨタグループで起きた。
 佐藤社長は「車づくりの現場での関与が足りなかった」として、経営体制の見直しも含めトヨタが関与を強めていく考えを示した。