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派閥解消のまやかし 共同通信政治部長杉田雄心


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 岸田文雄首相が打ち出した自民党岸田派(宏池会)の解散方針にはサプライズ効果がある。安倍派、二階派を含めた派閥解消につながり、政治資金パーティー裏金事件の逆風を和らげるかもしれない。だが「全ての元凶は派閥」とのまやかしが潜んでいないか、目を凝らす必要がある。「政治とカネ」問題の眼目は政治不信の払拭だと忘れてはならない。
 昨年12月に岸田派離脱を宣言した首相がなぜ同派解散を宣言できるのか、という疑問はひとまず置いておく。東京地検特捜部の摘発を受け、批判をかわすために急きょ派閥解散を決めたのなら安直だ。無派閥ならクリーンとなるわけではない。
 事件があぶり出したのは裏金という使途不明のマネーである。政治資金の透明化、トカゲのしっぽ切りとならない連帯責任体制、第三者のチェックといった対策が欠かせない。とりわけ自民党から党幹部個人に支出される「政策活動費」は長年の懸案だ。2022年の収支報告書では計14億円超が使途非公開のつかみ金となった。「民主主義のコスト」という議論は使い道の透明化を進めて初めて成り立つ。
 「派閥解消はいつもかけ声倒れ」との指摘にも根拠がある。1989年の政治改革大綱が明記した「派閥解消の決意」は実現していない。安倍派の起源は、福田赳夫元首相が派閥の弊害を説いて62年に旗揚げした「党風刷新連盟」。派閥解消に集まった議員集団が時を経て最大派閥となっているのが自民党である。
 首相が岸田派解散に踏み込んだ大きな理由は同派若手を守るためだという。一見正論のようだが、近い将来の衆院選をにらんで派閥解散を決断したのなら動機不純だ。永田町のパワーゲームでなく、有権者の信頼を回復する政治刷新が問われている。