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中小賃上げ22業種が焦点 政労使、価格転嫁後押し


中小賃上げ22業種が焦点 政労使、価格転嫁後押し 政府が公表した価格転嫁を促進するの重点業種
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は22日、経団連、連合と政労使会議を官邸で開き、中小企業の賃上げに向け、人件費の一部である労務費や原材料費の上昇分を価格転嫁できていない22の重点業種を公表した。貨物運送業や工事関連といった人手不足が深刻な分野を中心に、所管官庁を通じて改善を促す。24日の労使フォーラムで本格化する2024年春闘を前に、賃上げ基調を確実なものとしたい思惑だ。
 会議で、岸田文雄首相は「適切な価格転嫁をわが国の新たな商習慣とする」と強調。これに対し、経団連の十倉雅和会長は会議後、記者団に「価格転嫁がなかなか進まない日本社会の風習を直す」と語った。
 連合の芳野友子会長は「政労使が心を合わせたことは非常に大きい」と述べ、中小の賃上げを進める重要性を訴えた。
 政府は昨年12月、1873の業界団体などに所管官庁を通じ、受注側の中小企業が労務費を取引価格に転嫁できるようにするための指針の周知を図った。強い立場の発注側が協議に応じず価格を据え置くなどの行為は、独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たると明確に盛り込んだ。
 この実効性を高めるため、事業コストに占める労務費の割合が高かったり価格転嫁が進んでいなかったりする22業種を選出した。運輸関連の他、機器の製造業や技術サービス業、情報サービス業、自動車整備業など幅広くカバーした。
 今春闘は、政府が経済界に23年実績を上回る賃上げを要請。連合は闘争方針で「5%以上」の賃上げ目標を示し、経団連も23年を上回る賃上げ率を目指す方針だ。
 23年春闘は、中小企業も含めて賃上げ率は約30年ぶりの高い水準となった。ただ物価上昇に賃金改善が追い付かず実質賃金は低下が続いている。