有料

2次避難者「肩身狭い」 被災地 恩恵遠く思い複雑


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 北陸新幹線金沢―敦賀延伸開業で16日、新たに新幹線停車駅となった石川県の加賀温泉駅周辺では、元日の能登半島地震で被災し旅館などに2次避難している人々から「観光客が増えて肩身が狭くなる」と不安をこぼす声が上がった。同駅から100キロ以上離れ、地震で甚大な被害が出た石川県珠洲市や輪島市でも住民らの複雑な思いが交錯した。
 珠洲市から加賀市山中温泉の宿に避難中の女性(69)は「観光客も宿泊しているので、宿からはロビーをあまりウロウロしないでくれと言われた」と打ち明ける。「お金を払っていない自分たちは肩身が狭い。お世話になっているので宿には潤ってほしいが、観光客が増えるともっと居づらくなる」と心境を明かす。
 加賀市片山津温泉に避難する輪島市の井上美栄さん(50)は3月末で退去予定だったが、ホテルの計らいで5月1日まで期間が延長された。「安心して過ごしながら先のことを考えられて本当に助かる」と感謝する。
 ただ、2次避難先の宿から、みなし仮設への転居を考える人も。輪島市から避難してきた60代男性は「はっきり出て行けとは言われていないが、観光客が増える中、自分は居ていいのかという気持ちがある」と引っ越し準備を始めた。
 一方、珠洲市や輪島市では3月16日も住民ががれきなどの片付けを懸命に進め、ボランティアや応援の自治体職員の姿があちこちに見られる被災地の日常が続いた。
 「新幹線なんて興味ないよ」と漏らしたのは珠洲市正院地区の瀬戸静子さん(88)。自宅の基礎には亀裂が入り、再建の見通しはまだない。「今はこれからどう生きていくかだけを考えている」と、自宅前の地割れが生じた畑を見つめた。市役所に罹災(りさい)証明書の再審査を求めに来た男性(68)も「遠いところの話だ。関係ない」と突き放した。
 輪島市を代表する観光地で、地震の影響で焼け落ちた「輪島朝市」。特産品の輪島塗などを扱う漆器ギャラリーが全壊した松本昌夫さん(70)は「輪島はまだ観光客を受け入れる状況ではないが、加賀の方から元気になって、うまく能登の復興につなげてほしい」と希望を語った。