有料

景気改善の実感乏しく


景気改善の実感乏しく 日銀の金融政策決定会合と植田和男総裁の記者会見ポイント
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日銀が大規模な金融緩和策の象徴とも言えるマイナス金利政策の解除を決めた。植田和男総裁は19日の記者会見で賃金と物価がそろって上がる好循環の実現が見通せる状況になったと胸を張り、「金利ある世界」への一歩を踏み出した。だが地域経済や中小企業に景気改善の実感は乏しい。長期間に及ぶ異例の緩和で経済に生じたひずみへの対処も重い課題としてのしかかる。
 今春闘で高水準の賃上げ回答が相次いだ背景には、好調な企業業績だけでなく、企業間の人材獲得競争の激化がある。これから回答が本格化する中小企業でも人手不足は深刻で、日銀は大企業と同様に賃上げの動きが広がるとみている。
 ただ物価変動を加味した実質賃金は1月まで22カ月連続で前年同月を下回っており、国民の生活実感は上向いていない。本当に日本経済全体に賃金と物価がそろって上がる好循環が生まれるのかどうかを注意深く見ていく必要がある。
 金利の上昇局面では、国の借金である国債の利払い費が増え、政策に使える経費を圧迫してしまう課題も生じる。
 日銀が金利を低く抑え続ける中で借金を重ねてきた政府は、いよいよ借金依存に歯止めをかけなければならない。