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「山の恵み」出荷制限続く 東日本大震災13年 原発事故影響、廃業も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2011年の東京電力福島第1原発事故の影響で、東日本で一部の食品に対し、出荷制限が出されてから13年が経過した。多くの食品が検査で安全性を確認され、制限は縮小傾向にある。一方で原木シイタケやジビエ(野生鳥獣肉)などの「山の恵み」を出荷できず、廃業や事業転換を迫られた生産者も少なくない。専門家は「地域の重要な資源や食文化がなくなってしまう」と危機感を募らせている。
 原発事故後、国は食品中の放射性物質に関する暫定基準値を設定。事故から10日後の11年3月21日に一部の食品で出荷が制限された以降、対象品目が増えた。
 基準値を下回った食品は順次、解除されているが、厚生労働省などによると、今月14日時点で地域ごとに野生キノコやタケノコ、イノシシやシカの肉、川魚など20品目以上が対象とされ、計14県で制限が残る。
 これらは市場に流通させることができず、生産者が減少する傾向にある。一部の食品で制限が続く岩手県の担当者は「産地再生に向けた事業に取り組んでいるが、限界がある」と話した。
 市場に出回らない代わりに、採った山菜を自分で調理したり、猟師が捕獲したジビエを仲間内で分け合ったりするなど一部で「自家消費」が広がっているのが実情だ。ある関係者は食用が自己責任とした上で「廃棄するだけではもったいない」と語った。
 福島大環境放射能研究所の塚田祥文教授(環境放射生態学)は「生産管理できる田畑の作物と、収穫を自然に委ねる山の恵みのような天然物とでは、放射線量管理の難しさが異なり、基準値を一律に適用するのは科学的に疑問。食品の安全基準を検証する段階に来ている」と指摘した。
 出荷制限 東京電力福島第1原発事故後、放射性セシウムは1キログラム当たり、100ベクレルとする基準が設定された。基準値を超える食品については、原子力災害対策特措法に基づき、国が都道府県に出荷停止を指示する。解除に向け、自治体が検査で基準値以下になった品目を国に申請し、承認を得る。知事が出荷自粛を要請することもある。