有料

身元保証 遺骨受け手なく 変わる家族観、支援模索 高齢者単身世帯 急増見通し


身元保証 遺骨受け手なく 変わる家族観、支援模索 高齢者単身世帯 急増見通し 身寄りのない高齢者が抱える課題の例
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2050年には1人暮らしの高齢者が急増するとの国の推計が12日、明らかになった。家族観の変容とともに、身内や地域のつながりは薄れ、身元保証や遺骨の扱いといった課題が既に顕在化。誰が高齢者を支えるのか。医療や介護現場の対応には限界があり、国や自治体は支援の在り方を模索する。
  (3面に関連)

 無縁

 「おかしい。身元が分かっている人の遺骨がなぜこんなに多いのか」。15年ほど前、神奈川県横須賀市の北見万幸特別福祉専門官は言葉を失った。市が保管する骨つぼには番号が振られ、身元不明の扱いになっていた。しかし、その多くには氏名が書かれている。「親族に知らせないのか」と尋ねると、部下は「連絡が返ってこないんです」と答えた。
 こうした無縁遺骨は全国共通の問題だ。総務省によると、21年10月末時点で延べ822市区町村が計約6万柱を保管。うち約5万4千柱は身元を確認できたものの、多くは引き取り手が見つからず、拒否する親族もいた。みとりや葬儀は家族の役割とされてきた価値観は変わり、高齢者が孤立する様子がうかがえる。
 身寄りがない高齢者にとっては、通院時の付き添いや入院、介護施設への入所などの身元保証、日常の金銭管理も大きな課題だ。こうした手続きを支援する民間サービスはあるが、近隣に事業者がなかったり、所得が低かったりすれば利用が難しい。また関係法令や制度が十分に整っておらず、契約トラブルなども目立つ。高齢者が住み慣れた地域で医療や介護を受けられるようにする「地域包括ケアシステム」での対応は、人手不足で限界がある。

 寄り添い

 横須賀市は15年、エンディングプラン・サポート事業を創設した。身寄りがない低所得の1人暮らし高齢者らを対象に、約27万円(24年度)を支払えば協力葬儀社との生前契約をサポート。亡くなるまでの間、市職員が電話や自宅訪問で見守りを続ける。市によると、23年度までに計146件の登録があり、うち72人は納骨まで見届けた。北見専門官は「寄り添い支え続けることが事業の要だ」と話す。
 妻を亡くしてから10年以上、1人で暮らす男性(86)は、23年に登録。「心細かったが、職員に話を聞いてもらえ、ありがたい」と安堵(あんど)する。
 高崎経済大の八木橋慶一教授(地域政策学)によると、類似の事業を行うのは23年末時点で全国に18自治体ある。「自治体がNPOなどと連携し、高齢者を積極的に地域コミュニティーにつなげる必要がある」と指摘する。

 早期に相談を

 国も自治体の取り組みを後押しする。厚生労働省は24年度から、入院に必要な身元保証や、死亡時の手続きなどの体制整備に着手した自治体に補助金を出すモデル事業を開始。民間サービスの提供に関するガイドラインも近く公表する。
 このほか孤独死などのリスクを抱える高齢者に大家が安心して住宅を貸せるようにするため、支援団体による訪問や、人感センサーで安否確認するサービスを備えた賃貸住宅を増やす方針。
 日本総合研究所の沢村香苗研究員は、日常的に関わるケアマネジャーらが業務外の身元保証を手伝う場合もあるとして「早くから地域包括支援センターなどに相談し、周囲がサポートできる状態を整えておくべきだ」と話す。