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万博海外館、着工3割弱 開幕1年前、遅れ深刻 業者未定も3割


万博海外館、着工3割弱 開幕1年前、遅れ深刻 業者未定も3割 万博パビリオンタイプAの現状
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2025年大阪・関西万博で各国が自前で建てるパビリオン「タイプA」のうち、建設工事が始まったのは全体の3割弱の14カ国にとどまることが12日分かった。日本国際博覧会協会(万博協会)の発表を基に共同通信が集計した。13日で開幕1年前となるが、3割の国は建設業者も決まっていない。吉村洋文大阪府知事は1年後も内装工事が一部で続く可能性に言及。不完全な形での開幕が現実味を帯びてきた。
 25年万博は膨らみ続けた費用に批判が根強く、開催の機運醸成も進んでいない。協会や企業発注のパビリオンは9割超が着工したが、海外館工事は停滞。展示内容が十分に伝わっていないことも盛り上がりに欠ける一因で、国や万博協会、大阪府・大阪市の対応が問われる1年になる。
 府・市は12日、府内の経済波及効果が約1兆6千億円との試算を発表。メリットを説明し開催に理解を得る狙いで、吉村知事は「日本全体が会場だという意識が広がれば、経済効果はより大きくなる」と強調した。
 海外パビリオンのうち各国の独自性が出るタイプAは「万博の華」とされ、当初は約60カ国が予定していた。だが複雑なデザインや商習慣の違い、資材価格高騰などで日本の業者と折り合えず契約が難航。ブラジルなど少なくとも7カ国がタイプAを断念し、協会が建設を代行する簡素型パビリオンなどの利用を決めた。メキシコは国内情勢を理由に万博参加を取りやめた。
 協会はタイプAの数が変わる可能性があるとして最新データを公表していないが現在の希望国は53カ国とみられる。
 協会によると着工済み14カ国はアイルランドやサウジアラビアなど。未着工だが建設業者は決めた国を加えても36カ国で、17カ国は業者と契約できていないことになる。
 協会は簡素型の利用決断を含めた早期の対応を求めており、幹部は「建設業者が見つからない場合も想定し準備している」と強調。協会副会長の吉村知事は4日の記者会見で「(開幕時に)内装がまだという国は過去の万博でもあった。今回もあり得るとは思う」と発言し、幹部も「その時の状況で判断するしかない」と開幕後の内装工事容認に含みを持たせた。
 協会は当初タイプA完成を今年7月としていたが、着工遅れを踏まえ建設完了時期を10月中旬に再設定した。だが2月時点の取材で複数の国が10月までに完成する見通しがないと回答している。