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対中制裁関税3倍増 米検討、鉄鋼とアルミで


対中制裁関税3倍増 米検討、鉄鋼とアルミで 世界の粗鋼生産量
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 【ワシントン共同=建部佑介】バイデン米政権は17日、中国製の鉄鋼とアルミニウムについて米通商法301条に基づく制裁関税を3倍に引き上げることを検討すると表明した。中国の過剰生産が米産業への打撃となっていると判断した。11月の大統領選をにらみ、労働者を守る姿勢をアピールする狙いもある。中国との摩擦が激化するのは必至で、日本企業を巻き込む形で世界市場の波乱要因となりそうだ。
 バイデン氏が米通商代表部(USTR)に引き上げ検討を指示した。USTRは中国の造船業の不公正な貿易慣行に対する調査も始める。米国家経済会議(NEC)のブレイナード委員長は記者団に「中国の過剰生産は、米国の鉄鋼やアルミニウム産業の将来に深刻なリスクをもたらす」と強調した。
 301条に基づく関税は、トランプ前政権が2018年から段階的に発動。中国は撤廃を求めているが、バイデン政権になっても応じていなかった。ホワイトハウスによると、鉄鋼とアルミに対する301条の現状の関税率は平均7・5%。米メディアは当局者の話として、検討の対象となる中国製品は米国の鉄鋼需要の0・6%分に相当するとしている。
 鉄鋼とアルミを巡っては、安全保障上の脅威があると判断すれば大統領が是正策を取れるとした通商拡大法232条に基づく追加関税も中国に課している。
 米政府関係者は、中国が世界の鉄鋼生産の約50%を占めていると指摘。価格は中国製が米国製より40%低く、中国政府による補助金などが背景にあるとし「新たな関税が発動されれば、より公平な競争環境が実現する」と説明した。
 バイデン氏は新たな関税措置について、17日午後に東部ペンシルベニア州の全米鉄鋼労働組合(USW)本部で演説する。USWが反対する日本製鉄のUSスチール買収にも言及する見通し。ホワイトハウスは「USスチールは米国の象徴的企業であり、国内で所有・運営され続けることが不可欠だと改めて明確にする」とした。