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「裏切り者」今や歓迎 他社経験、既存社員も恩恵


「裏切り者」今や歓迎 他社経験、既存社員も恩恵 取材に応じる三菱電機鎌倉製作所の松浦佑貴さん=2月、神奈川県鎌倉市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 終身雇用が経営の前提だった時代に「裏切り者」と呼ばれることもあった退職者。そんなOBやOGの復帰を今や多くの企業が歓迎していることが明らかになった。他社で経験を積み、古巣に戻って多様な仕事や役割を目指せる環境は、退職者だけでなく既存社員にとっても恩恵が大きい。

 三菱電機鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)で防衛装備品の開発・設計に携わる松浦佑貴さん(36)は10年間勤めた三菱電機を退職し、8カ月後に復帰した異色の経歴を持つ。シンクタンク研究員に転職して「やっぱり、ものづくりがしたい」と気付いたという。

 その際に頭をよぎったのが「カムバック採用」だ。採用手続きは通常と同じだが、退職者に復帰は歓迎だと伝えている。三菱電機の長坂英史採用グループマネージャーは「大切なのは『戻ってこよう』と思える会社に変わることだ。働く環境を改善すれば、今いる従業員の満足度も向上する」と話す。

 取り組みは企業以外にも広がる。総務省総合通信基盤局で電話番号の制度整備を担う番号企画室の平松寛代室長(46)は、総務省退職後に経験者として復帰した初めての総務官僚だ。入省から20年を超え、環境を変えてみたいとIT企業に転職。経営戦略や新規事業の立ち上げを担い、手応えを感じた。一方、広い視点で社会や経済を捉えられるのが自分の持ち味だと再認識した。「政策立案をしたい」との思いが強くなり約1年半で復帰した。不安もあったが、今や霞が関特有の業務を熟知し、民間の考えも分かる貴重な戦力だ。

 退職者と企業をつなぐサービスを手がける新興企業ハッカズークの鈴木仁志社長は「退職者は一番身近な社外のファンになり得る。企業の意識も変わってきた」と強調する。

(共同通信)