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広告制限 グーグル処分 公取委、課徴金は見送り


広告制限 グーグル処分 公取委、課徴金は見送り 米グーグルによる広告制限の構図
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米グーグルがLINEヤフーへの技術提供を中止し、同社による他社のポータルサイトへの「検索連動型広告」配信事業を制限したとして、公正取引委員会は22日、グーグルに初の行政処分を科した。違反認定をしない独禁法の確約手続きに基づき、グーグルが提出した改善計画を認定した。制限は7年以上続き、この間、広告主やポータルサイト運営者はグーグルしか選択できなかった。
 巨大ITに対し欧米当局はかねて監視を強化しており、公取委も足並みをそろえた。市場規模が1兆円を突破した検索連動型広告の分野でまずは厳格な姿勢を示したといえる。改善計画が履行されれば競争が回復するとして、課徴金納付命令などは見送った。グーグルは検索サービスでも競争をゆがめた疑いがあり、公取委は調査を続ける。
 公取委は2022年春から夏ごろに調査を始め、今年3月、グーグルに違反の疑いを通知した。2年近い調査の結果、独禁法が禁じる私的独占や競争者への取引妨害に当たり得ると結論付けた。グーグルは「独禁法に違反したとは認定されていない。計画を確実に履行する」とコメント。ヤフーは「コメントは控える」とした。
 改善計画は(1)ヤフーへの技術提供の制限中止を3年続ける(2)専門家の監査を受ける(3)公取委に履行状況を報告―などが柱。巨大ITを巡る環境は短期間に変化するため、期間を3年とした。
 処分の対象は、グーグルやヤフーが他社のポータルサイトから広告枠を買い取り、検索連動型広告を配信する「モバイル・シンジケーション取引」。
 検索連動型広告 スマートフォンやパソコンで検索サイトを利用した際、入力した語句に連動した内容が表示される広告。例えば「腰痛」と検索した人のスマホにはマッサージやコルセットの広告が多く流れるようになる。個人が関心のある商品やサービスを予測できるため、広告主にとって少ない費用でより高い効果を期待できる。市場規模は年々拡大しており、2023年には国内のインターネット広告費全体の約4割に当たる1兆729億円に上った。公正取引委員会が21年に公表した報告書によると、国内シェアの多くを米グーグルが占める。