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堅調米国、動けぬ日本 円売り歯止めかからず   


堅調米国、動けぬ日本 円売り歯止めかからず    日米の経済データ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 外国為替市場で円売りが止まらない。26日のニューヨーク市場の円相場は急落し、34年ぶりの円安ドル高水準を更新した。堅調な経済を背景に米国の金利が高止まりを続ける一方、日銀は動けぬ状態。日米の金利差が開いた状況が続く中で日本が打てる手は限られてきている。

 海外断念

 「海外旅行での出費を考えて国内にしたが、国内も物価が上がっている。これではどこにも行けなくなってしまう」
 ゴールデンウイーク(GW)初日の27日、東京・浅草を訪れていた熊本市の会社員大室美麗さん(21)はため息をついた。当初はイタリアや英国観光を予定していたが、円安の進行で目的地を海外から国内に切り替えたという。
 輸入食品の値上がりや海外留学の費用増大…。歯止めがかからない円安が多くの人の生活に影を落としている。

 肩すかし

 金融引き締めの意思表示や円安是正の方策を打ち出す可能性がある―。日銀の26日の金融政策決定会合では、市場の予想が肩すかしに終わった。
 「基調的な物価上昇率に大きな影響は与えていない」。植田和男総裁は会合後の記者会見で円安についてこう述べるにとどまり、「総裁が為替について何も語らなかったことで円売りへの安心感が広がった」(市場関係者)。

 圧力増大 

 円売りの背景には、予想以上に堅調な米経済の力強さがある。
 米商務省が25日に発表した1~3月期の米国内総生産(GDP)は年率換算で前期比1・6%増となり、7四半期連続でプラス成長。3月の個人消費支出(PCE)物価指数も前年同月比の上昇率が2月から拡大した。
 6月とみられていた米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始時期は9月以降にずれ込む公算が大きくなっており、一部では年内は見送りとの見方も浮上している。
 日本政府・日銀が為替介入に踏み切らない中で、投機筋は円売り圧力を増大。ロイター通信は今月中旬、米商品先物取引委員会(CFTC)のデータを基に、ヘッジファンドが過去17年間で最大の円売りポジションを構築していると報じた。(ニューヨーク、東京共同=隈本友祐、浅田佳奈子)