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日銀総裁、円安懸念強調 「軌道修正」との見方も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日銀の植田和男総裁が、円安懸念を強調する発言を繰り返している。9日は参院財政金融委員会で、円安で基調的な物価上昇率が上振れすれば「金融政策上の対応が必要になる」と追加利上げに踏み切る考えを表明。植田氏は4月26日の記者会見で円安に強い懸念を示さず、会見中に円安が進んだこともあり、市場では「軌道修正を図っている」との見方もある。
 4月の会見は、日銀が25、26日に開いた金融政策決定会合の終了後に行われた。植田氏は足元の円安進行が「基調的な物価上昇率に大きな影響は与えていない」と発言。市場では日銀が金融引き締めに慎重だと受け止められ、円相場が会見中に急落した。
 円相場は29日に1ドル=160円台を付けた後に急騰。市場では政府・日銀が円買いドル売りの為替介入に踏み切ったとみられている。
 植田氏の発言が変化したのは今月7日。岸田文雄首相との会談後、記者団に「日銀の政策運営上、(円安を)十分注視していくことを確認した」と説明した。
 日銀が9日発表した4月25、26日の決定会合の「主な意見」でも円安を懸念する政策委員の発言が多く取り上げられた。
 ある政策委員は円安を背景に物価の上振れが続けば「(金融政策の)正常化のペースが速まる可能性は十分にある」と強調。「物価の上振れ方向のリスクに注意が必要」といった声もあった。
 BNPパリバ証券の白石洋シニアエコノミストは「為替介入に追い込まれたことを受け、日銀はコミュニケーションの修正を図った」と指摘。主な意見の内容は「会合後の総裁会見よりも(金融引き締めに積極的な)タカ派の印象を与えるものだ」と話す。