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景気足踏み、決め手欠く 利上げ時期見極め難しく  


景気足踏み、決め手欠く 利上げ時期見極め難しく   さくらリポートで報告された企業の主な声
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日銀が8日公表した地域経済報告(さくらリポート)は、景気判断を横ばいとする地域が多く、国内全体として足踏み感を示す内容だった。歴史的な円安による物価高を背景に、金融市場の一部でくすぶる早期の追加利上げ観測を後押しする材料にはならなかった。
 今月30、31日の金融政策決定会合に向け、日銀は難しい判断を迫られる。

節約

 「日常消費を中心に節約志向が急に広がっているとみている」。日銀の岡本宜樹札幌支店長は公表後の記者会見で、こう指摘した。
 リポートで示された全9地域のうち、個人消費は近畿など2地域で判断を引き上げたが、北海道など3地域は引き下げた。企業からは「セール品や廉価品の引き合いが強い」(家電販売店)、「顧客の節約志向の高まりを感じている」(商業施設)などと消費の弱さを懸念する声が目立った。
 低調な背景には、賃上げが物価の上昇に追いついていない現状がある。厚生労働省が8日公表した5月の毎月勤労統計調査によると、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は前年同月と比べて1・4%減った。過去最長の26カ月連続のマイナスが大きな重しとなっている。
 その一方、企業の設備投資は堅調に推移した。2地域が上方修正し、下方修正はゼロ。人手不足や旺盛な受注に対応するため「省人化投資を前倒しして実施」(金属製品)といった積極的な声が聞かれた。

慎重

 景気がまだら模様を示す中、金融政策の正常化を進める日銀の追加利上げ時期が焦点となっている。3月にマイナス金利政策を解除し、6月には長期金利を低く抑えるために続けてきた巨額の国債購入を減額する方針を決定。7月末には今後の具体的な減額計画を示す。減額は長期金利の上昇圧力となる。
 日銀の植田和男総裁は国債減額と併せて、追加利上げも状況次第で「当然あり得る」と述べ、可能性に含みを持たせている。円安是正のため利上げに踏み切るべきか、低金利を続け景気を下支えした方がいいのか、見解は分かれている。
 三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは、減額と利上げを同時に決定すれば金融市場への影響が大きいと指摘し「消費に弱さを抱える状況では、利上げに慎重にならざるを得ない」との見方を示した。