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県政大揺れ、辞職要求も 文書作成に懲戒、批判噴出


県政大揺れ、辞職要求も 文書作成に懲戒、批判噴出 記者会見する兵庫県の斎藤元彦知事。職にとどまる考えを強調した=12日午後、県庁
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 斎藤元彦兵庫県知事の「パワハラ疑惑」告発文書に端を発した騒動で副知事が辞職を表明した。斎藤氏は続投の意向だが、文書を「誹謗(ひぼう)中傷」と断じ、作成した元幹部の男性に懲戒処分を下した対応に批判が噴出。県議会は調査特別委員会(百条委員会)を51年ぶりに設置し真相解明に乗り出したが、男性が証人尋問前に死亡した事態を受け、職員から辞職を求める声が公然と上がり、県政が大きく揺れている。

「うそ八百」

 「うその文書を作って流すのは公務員として失格だ」。3月27日の記者会見。斎藤氏は文書を作り外部関係者らに配った男性を西播磨県民局長から解任すると発表した。
 文書に書かれた疑惑は7項目。出張先で公用車を降り20メートル歩かされただけで職員を怒鳴り散らしたパワハラの他、視察企業からのコーヒーメーカー受け取りなどを批判する内容だった。これに反発した斎藤氏は「うそ八百」と男性を強く非難し、告訴など法的手続きの可能性もちらつかせた。
 内部調査した県は5月、「核心的な部分が事実ではない」として男性を停職3カ月とし、コーヒーメーカー受け取りは自分だと認めた産業労働部長は訓告にとどめた。
 疑惑の火は消えなかった。内部調査に協力した弁護士が、告発文書で知事のパーティー券購入に関与したと指摘された県信用保証協会の顧問だと判明。調査の中立性を強調してきた斎藤氏の主張が揺らぎ、県議会の要請に押されて第三者機関の再調査受け入れを表明した。
 さらに県議会は6月、地方自治法100条に基づき強い調査権限を持つ百条委の設置に踏み切る。公明、日本維新の会両党の会派が反対する中、2021年の知事選で斎藤氏を推薦した最大勢力・自民党会派などの賛成多数で決まった。

「知事の責任」

 7月8日、突然の訃報に県庁で動揺が広がった。19日に百条委に出席することが決まっていた元幹部の男性の遺体が7日発見された。自殺とみられる。
 「告発した職員を守ることができず痛恨の極み」「もはや県民の信頼回復は望めない」。約4千人の組合員を抱える県職員労働組合が10日、知事宛ての文書で事実上の辞職要求を突き付けた。だが斎藤氏は会見で辞職を否定。「文書の内容は事実ではない。これまでの対応は適切だった」と従来の主張を繰り返した。
 百条委設置の際「真実が明らかになっていくことを願っている」とコメントを出した男性の死。ある県議は「ここまで問題を大きくしたのは知事の責任だ」と突き放す。
 12日の県庁。混乱を理由に辞職表明した片山安孝副知事は、対応が後手に回る斎藤氏への不満をにじませつつ「なんで支えられなかったのか」と涙ながらに自らを責めた。
 斎藤氏は同日夕の会見で「職員との信頼を再構築し、県政を立て直す」と述べ、職にとどまる考えを改めて強調した。大阪府財政課長を辞し知事選を制してから今月18日で3年。トップとしての資質が問われている。