地域と連携し変革生む 沖縄科学技術大学院大学(OIST) カリン・マルキデス学長【琉球新報デジタルPR特別企画】


地域と連携し変革生む 沖縄科学技術大学院大学(OIST) カリン・マルキデス学長【琉球新報デジタルPR特別企画】
この記事を書いた人 琉球新報社

【プロフィール】
 1951年スウェーデン生まれ。専門は分析化学。スウェーデン・イノベーションシステム庁副長官、米スタンフォード大客員教授、スウェーデンチャルマース工科大学学長などを経て2023年6月より現職。

―2023年を振り返って。

 OISTの学長就任とともに沖縄に移住した私にとって、23年は大きな変化の年でした。就任後、沖縄の方々に温かく迎え入れていただき、心から感謝しております。OISTを囲む豊かな自然と温かい人々に、今後の発展へのさらなる可能性を感じています。

 故郷のスウェーデンや世界各地での経験を生かし、OISTと沖縄における産学官連携の発展に貢献できることを光栄に感じると同時に、新しい一歩を踏み出す喜びをかみしめています。

—注力したいことは。

 大学の役割は研究や教育を行うだけでなく、グローバルな視点を持ちながら、知識と地域の課題との架け橋となることです。常に知識の最前線にいる大学は本質的にグローバルな存在であると同時に、地域社会とも深く関わり、その土地の人、資産、歴史から創出される新たな知識や次世代のリーダーの育成、そして地域の豊かで持続可能な未来に大きなインパクトを与えるローカルな存在でもあります。地域と積極的に連携し、付加価値を生み出し、沖縄、日本、そして世界の舞台でOISTの社会的役割を果たしていくことで、持続可能で強靭(きょうじん)な社会の発展につながっていくと信じています。

 OISTは教員数90人という小規模な大学ですが、卓越した知識と自由な発想を持ち合わせた研究者を引き寄せ、常に優れた研究成果やリーダーを輩出しています。ありがたいことに、国内外の多くの企業や大学がOISTでの海洋研究、量子関連技術、健康、持続可能なエネルギーといった分野に大きな関心をよせており、活発なコラボレーションや意見交換が行われています。今後数年かけて、産学官のより幅広いステークホルダーとの連携を強化することに注力していきます。

—沖縄でのOISTの役割は。

 OISTの科学者たちが生み出す研究成果や新技術は、今後ますます社会に革新をもたらすものとだと確信しています。一例として、マリンゲノミックスユニットを率いる佐藤矩行教授は、海に潜らずに海水を採取して解析するだけで、そこに生息するサンゴ礁を高い精度で観測する技術を開発し、それを基に、沖縄や周辺地域などのサンゴ環境の改善を目指しています。県内外の企業、自治体の協力を得て始まったこのプロジェクトには高い注目が集まっています。

 自然の境界線に囲まれた「島」という立地を生かし、いま世界中で、島でイノベーションクラスターを創り出す試みが進んでいます。そうした視点から、沖縄の産官学連携の実証実験場としての潜在力にも注目しています。

 沖縄から新たな商機と変革を生み出していくには、共通の目標に向けた集合的な取り組みが必要です。現在OISTは自治体や企業に働きかけ、手を取り合って発展に寄与できる取り組みや、共通の関心分野を模索しています。県内の皆さまとの対話を通じ協力し合うことで、共通の目標達成を目指します。しっかりとOISTの役割を果たしていき、地域の皆さまと一緒に、美しい沖縄の持続可能な豊かな未来を切り開いていきます。