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「がんを経験した自分の使命」 学校現場で正しい認識と健康づくり伝える認定心理士の徳元亮大さん、学会から奨励賞


社会
「がんを経験した自分の使命」 学校現場で正しい認識と健康づくり伝える認定心理士の徳元亮大さん、学会から奨励賞 「子どもたちに向けたがん教育で、親世代にも健康づくりの大切さが広がることを期待したい」と語る徳元亮太さん=5日、那覇市泉崎の琉球新報社
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 「がんを経験した自分の使命」との思いで、昨年、沖縄がん教育サポートセンターを設立し、教育現場でがんに関する講演活動を続ける認定心理士の徳元亮太さん(沖縄第一病院)が日本心理学会による「シチズン・サイコロジスト奨励賞」を受賞した。14日、兵庫県で授賞式が行われる。心の健康と福祉の増進に寄与する認定心理士を顕彰する取り組みで、県出身者の受賞は初めて。徳元さんは「2人に1人ががんになる時代。『がん=死』のような先入観をなくし、健康づくりや自分らしく生きる大切さを発信したい」と語る。

甲状腺がんに

 活動の原動力は2020年11月に甲状腺がんと診断され、同年12月に切除手術を受けた経験だ。「妻と子2人はどうなるのか」。告知後は不安で押しつぶされそうだったが、家族や知人など「頼れる存在」に支えられた。

 退院後は薬の副作用が残る中で徳元さんの業務量を調整するなど職場が理解を示してくれた。日常に戻る中で、がんを通して得た気づきや学びを社会に還元したいという思いが強まり、沖縄がん教育サポートセンターを設立した。

正しい情報を

 がんと診断されると、悲観して仕事を辞めたり医療以外の情報にほんろうされたりする事例がある。行政や医療機関も幅広い支援策を展開するが、同センターは次代を担う子ども向けの情報発信に力点を置く。

 児童生徒向けの講演では、健康づくりの重要性を説きながら、自己責任論や偏見につながらないよう意識している。

 自身の体験を基に「がんになることは不運だが不幸ではない」ことも強調し、親や教員などには、支援策のほか早期治療の大切さも繰り返しているという。

一人で悩まないで

 がんは珍しい病気ではないため、講演前には保護者向けにがんに関するアンケートを欠かさない。「治療中の家族がいる児童生徒がいれば、できるだけその子の目を見て話すようにしている」。

 ある学校で講演後、がん治療中の親を支える「ヤングケアラー」の生徒に、抱え込んだ悩みを打ち明けられた。「あなたは一人じゃないよ」と語りかけた。「がんサバイバー」だからこそ寄り添った対応ができると感じている。

 今後は同センターはNPO法人化する予定だ。「今後は派遣講師も養成し、多くの子どもたちにがんに関する知識を広めていきたい」。今回の受賞も励みに活動の幅を広げていくつもりだ。
 (嘉陽拓也)