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AI組織の騒動 モバプリの知っ得[253]


AI組織の騒動 モバプリの知っ得[253]
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生成AI「ChatGPT」を開発するOpenAI(オープンエーアイ)社は10月17日、共同創業者で組織の重要人物であるサム・アルトマン氏をCEOから解任することを発表しました。しかし、解任の発表後、多くの従業員が「アルトマンを戻さなければ私たちも退社をする」といった署名を行いました。結果、解任発表からわずか5日後の22日、OpenAIはアルトマン氏がCEOに復帰することを発表しました。今回の「解任騒動」は、アルトマン氏がなぜ解任され、なぜ戻ってきたのか、詳しい理由は明らかになっていませんが、ChatGPTの進化を拡大させたいアルトマン氏と、AIの進化を慎重に進めたい人たちの対立が原因といわれています。

新しいものを作り出すことができる「生成AI」は便利である一方、設計を間違えると問題のあるコンテンツを作り出してしまうことがあります【※1】。そのため、AIを作るときの「倫理観」はとても重要です。生成AIがどのように設計され、どのように動いているかは、ただ使っているだけだとほとんど分かりません。今後、重要な意思決定を委ねる可能性もある生成AIについての情報がオープンにならなければ、人類は間違った道へ進む可能性があります。

今回の解任騒動は、一見「元に戻っただけ」に見えますが、AIの倫理観をめぐる重大な対立が内部で発生し、それが表沙汰にならずに内部だけで処理されていたとしたら、非常に怖い話です。「便利だから」とAIを使うにしても、どのような工程で作られているのかを知る姿勢も問われます。

~ 言葉の解説 ~

※1 問題のあるコンテンツを作り出してしまうことがあります … 2016年にマイクロソフト社が開発した「Tay(テイ)」は、ユーザーの言葉を学習し、Twitter(現X)でやり取りできる「AIボット」でした。しかし、人種差別的な言語を学習して、差別的な言葉を投稿したため、登場から数時間で停止しました。AIは何でも完璧な受け答えができる存在ではなく、「どのような学習をして、どのように動くか」がすごく重要で、そのさじ加減を間違えると、差別をまき散らして、私たちの安全をおびやかす恐れがあります。

モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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