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いじめで苦しむ子の味方に 相談アプリ開発の谷山さん 被害経験、対策に生かす


いじめで苦しむ子の味方に 相談アプリ開発の谷山さん 被害経験、対策に生かす 「匿名で相談できるアプリは、電話やメールより(相談する)ハードルを下げられる」と話す谷山大三郎さん
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 コロナ禍が明け、教室に子どもが戻る中、児童や生徒を取り巻くいじめ問題は深刻さを増している。相談アプリの開発や普及に力を注ぐ谷山大三郎さん(41)は、自身もいじめられた経験がある。「親に心配をかけたくない、などの理由で被害を訴えられない子は多い。周囲の大人が気付いて手を差し伸べられる仕組みを整えたい」と話す。

 教育に関わるNPO法人の職員を経て、2015年に起業。いじめの被害者や目撃者が、匿名で専門の相談員らに報告、相談できるアプリ「STANDBY(スタンドバイ)」を開発、小中学生が授業で使うタブレットなどへの導入を自治体や学校に働きかけている。早期発見と対応が何よりも大切だと考えるからだ。

子どもがいじめを匿名で報告できるアプリ「STANDBY(スタンドバイ)」の仕組み
子どもがいじめを匿名で報告できるアプリ「STANDBY(スタンドバイ)」の仕組み

 「僕自身、手を差し伸べてもらえなかったらどうなったか分からない」と振り返る。谷山さんがいじめられるようになったのは小学5年生の時。同級生に姿勢の悪さをからかわれ、やがて背中をたたかれたり、蹴られたりするようになった。

 ほうきの柄で背中を突かれ、痛みで動けなくなっていても、同級生は笑っているか、見て見ぬふり。「体の痛み以上に、周りに味方がいない孤独感がきつかった」

 親との関係は悪くなかったが「だからこそ心配をかけるのが嫌で、打ち明けられなかった」。相談できる相手もなく追い詰められていた時、担任の先生が事態に気付き、ホームルームで注意してくれた。

 「このクラスで人を傷つける行為を許さない、と強い口調で言ってくれて、目の前がぱっと明るくなった」。校外でのいじめは続いたものの「味方になってくれる人がいるという安心感で、気持ちが少し楽になった」という。

 「先生以外にも味方になってくれる人が身近にいれば、独りぼっちで苦しむ子は減る」。そんな思いから、現在は全国の小中学校などを訪れて「いじめを傍観しない雰囲気づくり」を目的とした特別授業も行っている。

 子どもたちには「いじめを目撃したらどうするか」などと問いかけ、「見て見ぬふりをするのはいじめを認めたのと同じ」と伝える。「いじめはない方がいい、というのはみんな同じ。その気持ちを行動につなげてほしい」

 たとえ直接、注意できなくても、大人たちに助けを求めることはできるかもしれない。「行動を起こす子が増えれば自然といじめは減っていく」。苦しむ子の「味方」を日本中に増やすため、歩みを続ける。

(共同通信)