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事業者は初犯防ぐ研修を 日本版DBS向け提案 「子どもの権利中心に」 NPO法人フローレンス・赤坂緑さん


事業者は初犯防ぐ研修を 日本版DBS向け提案 「子どもの権利中心に」 NPO法人フローレンス・赤坂緑さん 「性犯罪を防ぐため、大人と子どもが2人きりにならない仕組みをつくるなど、事業者の努力でできることもあります」と話す赤坂緑さん
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の有無を確認する「日本版DBS」制度の創設を巡る議論が進む。保育やシッター事業などを手がけ、早くから制度を提言する認定NPO法人フローレンスの赤坂緑代表理事は「子どもの権利を中心に据え考えるべきだ」と語る。

 2017年から日本版DBSの創設を訴えてきましたが、社会の議論が高まったのは20年。男性ベビーシッターによる男児へのわいせつ事件がきっかけでした。「育児に人の手を借りてもよい」と、シッター文化が社会に受け入れられ始めた頃だったので衝撃を受け、署名活動を行いました。昨年は大手学習塾で講師による盗撮事件もあり、議論が活発化しました。

 12歳以下の子どもに対する重大な性犯罪の認知件数は年間約千件ですが、氷山の一角とみられます。被害と認識しにくい上、民間団体の調査では警察への相談までに平均7~9年かかり、明るみに出にくいからです。また法務省の報告書では、性犯罪の5年以内の再犯率は13.9%です。

 そうした背景がある中で、創設が期待されているのが日本版DBSです。性犯罪歴のデータベースを作り、学校や保育所に勤める人の犯罪歴の確認を義務化するもの。英国の制度を参考にしており、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪の再犯を防ぐ狙いがあります。

 犯罪歴に条例違反も含むのか、学習塾は確認義務化の対象としないのか、犯罪歴がある人の職業選択の自由を制限しないか…。さまざまな論点から議論されていますが、まずは子どもを守るために制度を始めてほしいです。その上で不備がないか、3年後の見直しを前提にした検討会の設置を政府に要望しています。

 ただ、この制度は再犯を防ぐためのもので、初犯は防げません。

 教育や保育に携わる大人は子どもに対し、支配的な立場になりやすいといわれます。保育の現場では子どもが大人に従わないといけないと思ってしまう関係はどこでも起きる可能性があります。無意識なこともあり、大人の自覚を促していくことが欠かせません。

 提案したいのは事業者に、どんな時でも子どもに不利益が生じないようにする「セーフガーディング(安全保護)」研修を義務付けることです。

 フローレンスでは子どもたちに、心と体を守るのは権利であることを知ってもらう取り組みを進めています。「相手が誰でも触られたら嫌だと言ってよい」「水着で隠れる部分は安易に人には見せてはいけない」といったことを日常的に伝え、赤ちゃんでもおむつ替えの時には仕切りを設置しています。最も大切なのは子どもの権利であり、それを尊重することです。(談)


 あかさか・みどり 1976年生まれ。横浜市出身。2014年にフローレンスに入職。保育事業や政策提言に携わる。保育士、キャリアコンサルタント。

(共同通信)