有料

夜間中、シニア・留学生にも希望 「学び直し いつからでも」


夜間中、シニア・留学生にも希望 「学び直し いつからでも」 天神スクールの1年生の授業。メインの教員(奥)の他、支援の教員(左端)が生徒の学習を手助けする=福島市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2016年の「教育機会確保法」成立後、開設が相次ぐ公立の夜間中学。不登校などで十分に勉強できず学び直したい、出身国で満足に受けられなかった「義務教育」を日本で―。異なるニーズに応える学校づくりが、手探りで進められている。
 文部科学省によると昨年10月時点で、公立の夜間中学は17都道府県の44校。24年度も福島県、群馬県などに開校したが、文科省は都道府県、政令指定都市に1校以上の設置を目指している。
 オープンしたばかりの福島市立福島第四中学校天神スクールを4月下旬、訪ねた。温かみのある木の看板が目を引いた。
 1年生が16人、2年生が1人でほとんどが日本国籍。入学前に「計算が苦手」と話す人もいて、教頭の山内崇司さんは「できるだけ複数の教員で支援していく」と話す。教員には不登校支援のスペシャリストもいる。
 3時間目は2年生が教員とマンツーマンで社会を、隣の教室では1年生が数学を学んでいた。1年生は班に分かれてトランプゲームをした後で「ゼロとは何か」を学習。メインの教員の他、支援の教員が複数控え、年配の生徒らにタブレットの使い方を教えていた。
 60代の1年生で、小学生のころ不登校だった高野吉富さんは「基礎ができていないので、勉強したい」との思いで入学。10代後半の安斉陽海さんは中学2年の3学期から学校に通わなくなったが、母親の勧めで天神スクールに。「今は勉強が楽しい。人生に色が付いた」
 10年に「福島に公立夜間中学をつくる会」を立ち上げた大谷一代さんは「入学式で、校長先生が生徒一人一人に合わせた教育をするという話をしていて、頼もしく思った」と期待を込める。一方で、遠方の人も通いやすくなるよう「交通費補助を居住自治体に求めていきたい」と語った。
 埼玉県の川口市立芝西中学校陽春分校(19年開校)の生徒数は49人で、外国籍など海外にルーツを持つ生徒が大多数という。4月下旬に訪れると、1年生が3クラスに分かれて数学の授業を受けていた。テーマは「正負の数」。気温の数字を比較しながら「高い」「低い」と日本語の表現も一緒に学ぶクラスもあった。
 外国からの生徒に対応して、10月入学も始める。教頭の佐藤幸夫さんは「いつからでも学び直せるという姿勢を、学校としては発信していかないといけない」と話した。
 フィリピン出身の3年生で生徒会長を務める10代後半のマコロール・ジャスティン・デルさんは、日本語が分かるようになり「人の話を聞くのが楽しい」と話す。卒業したら高校に進学し、その後は「美容師の仕事をしたい」。明確なビジョンを示していた。