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広がる「子どもの権利」 各地で条例 少子化、地域の「生き残り」託す


広がる「子どもの権利」 各地で条例 少子化、地域の「生き残り」託す 川崎市が設置した「子ども会議」の活動。子どもの意見を市政に反映させるため提言を行っている=1月
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 子どもの権利に関する条例を制定する地方自治体が相次ぐ。子どもや若者の意見を取り入れるための会議をつくったり、権利擁護に向けて相談機関を設けたり取り組みはさまざまだ。国にも波及し、昨年末に閣議決定の「こども大綱」には子どもや若者を「権利の主体」と明記。背景には少子化の急速な進展による危機感があるとみられる。
 厚生労働省が今年2月に発表した人口動態統計の速報値(外国人らを含む)によると、昨年の出生数は過去最少の75万8631人だった。出生数は第2次ベビーブームのピークだった1973年(約209万人)以降、減少傾向が続いている。
 NPO法人「子どもの権利条約総合研究所」(東京都目黒区)の調査によると、国連総会で採択されている子どもの権利条約の理念を反映するなどし、子どもの権利に関する総合条例を制定した自治体は、昨年5月時点で22都道府県の64自治体に上る。近年の制定も増えている。
 少子化とともに人口減少も進展する。同研究所の顧問喜多明人早大名誉教授は「地域の生き残りには子どもたちに頑張ってもらうしかない。元気を取り戻すためにも権利条例が必要になっている」と分析する。
 川崎市は2001年、全国に先駆けて子どもの権利に関する条例を施行した。学校や家庭での暴力が問題化したことがきっかけとなった。子どもや有識者、学校関係者らが参加する会議、集会などを200回以上開き、制定した。
 条例を踏まえて市子ども会議を設置し、子どもの意見を市政に反映させるため提言を行う。担当する佐藤直子さんは「近年では市への視察も相次いでいる」と話す。
 14年制定の長野県は学校や進路に関する悩みを受け付ける「子ども支援センター」を15年4月に設置した。22年度は千件超の相談があった。県内の全学校に周知し、担当者は「直近では相談件数が増えている」と話す。
 子どもを対象にパブリックコメントを実施し、23年に制定した東京都武蔵野市。子どもの権利条約が採択された11月20日を「市子どもの権利の日」とし、リーフレットを作ったりイベントを開いたりして周知を進める。
 一方、ある自治体関係者からは「条例を作るだけでなく、実態が伴わないといけない」という意見も。こども家庭庁幹部は「少子化が進む中、子どもが希少という意識が浸透していることの表れではないか」と述べた。

 子どもの権利条約 1989年に国連総会で採択され、日本は94年に批准した。子どもを独立した人格と尊厳を持つ権利主体と位置付けた。主に(1)命を守られて生きる権利(2)医療や教育、生活支援を受けて育つ権利(3)暴力や搾取から守られる権利(4)自由に意見を表明して活動に参加する権利―を守るよう定めている。この理念に基づいて、地方自治体が子どもの権利条例を制定していることが多い。