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部活動に上限時間設定 茨城県教委 保護者、生徒ら反発も


部活動に上限時間設定 茨城県教委 保護者、生徒ら反発も 部活動時間を巡る茨城県と国の基準
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 公立中高の部活動時間に2023年度から「上限」を設けた茨城県教育委員会の方針が、学校現場に波紋を広げている。「適切な休養を確保する」との名目で、働き方改革を進めたい教員側は歓迎。ただ、もっと練習に打ち込みたい生徒や保護者らが反発し、思惑は平行線をたどっている。
 県教委が設定した部活動時間の上限は、平日2時間。休日は中学校3時間、高校4時間。いずれも週2日以上の休養日が必要で、22年12月に公表した。教員の長時間労働抑制と生徒の心身の健康を守るためとして、約3カ月後の23年4月の運用開始を目指した。
 国の指針は平日2時間「程度」としており、より踏み込んだ形だ。スポーツ庁の担当者は「知る限りでは、茨城県のルールが最も厳格ではないか」と話す。県の担当者は「学校生活は部活が全てではない。心も体も良い状態で多くの経験を積み、進学や就職につなげてほしい」と説明する。
 公表後、保護者や競技団体が一斉に反対し、一部で見直しを求める署名活動も起きた。「なぜ今変えるのかと戸惑った」。県立高野球部に所属する男子生徒(17)は当時を振り返る。部のミーティングで突然顧問から県の方針が伝えられ「自分たちにできることをしよう」と署名に加わった。
 県内の野球強豪校の多くは私立で、上限は適用されない。母親(47)も「同じ甲子園を目指して頑張っているのに、練習時間が減るのはあまりにも不利だ」とこぼす。
 教員側の受け止めは違う。県の方針を「ありがたい」と話したのは、公立中で吹奏楽部顧問を2年間務めた経験がある女性教諭(31)。専門は国語で音楽指導の知識はないが、自身も吹奏楽部だった経験を買われ、校長から顧問を命じられた。
 「やるからには生徒のために」と一生懸命頑張ったが時間が足りない。本業の授業の準備で休みをつぶす日々に複雑な思いを抱えた。「もっと練習をしたい生徒や保護者の希望を聞いていたら、教員の負担はどんどん大きくなる」と吐露した。
 最終的に、県教委は23年6月、上限を超えられる特例措置を高校にのみ設けた。部活ごとに年間計画を県教委に提出し、指導体制や休養日数を外部の有識者が審査。23年度は16校23部に許可し、24年度も申請を求める。
 関西大の神谷拓教授(スポーツ教育学)は「教員の働き方改革と生徒が安全に部活動を行うことは、教育環境を整えるという意味で同じはず。子どもの権利と大人の権利をてんびんにかけた議論になっている」と指摘する。
 部活運営の在り方には、どの自治体も悩みを抱えているという。「教員数を増やしたり、部活指導員を雇ったりするなど、国が予算をかけて環境整備するべきだ」とした。