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モンテッソーリの小学校を 東京・あべさん 「自由な発想力育てたい」


モンテッソーリの小学校を 東京・あべさん 「自由な発想力育てたい」 生命の歴史について話すあべようこさん(中央奥)と、それを聴く子どもたち
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 不登校の小中学生が増え続ける背景に教育の画一性が指摘される中、子ども一人一人の個性を伸ばす「モンテッソーリ教育」が注目されている。約70人が通う東京・世田谷の学習教室「モンテッソーリ・ファーム」の代表あべようこさんは、この教育法を取り入れた小学校の新設が目標。「小学校を、自由な発想力を持つ子どもを育てる場所にしたい」とほほ笑む。
 小学1年の男子児童が机に向かって1時間、じっと熱中している。取り組んでいるのは、5桁の数字に2をかける「数」の教科。小学校ではまだ九九を習っていないが、ビーズが連なった独自の教材を使い、位ごとに計算していく。答えにたどり着いた瞬間の表情は、達成感にあふれていた。
 モンテッソーリ教育は、イタリアの医師マリア・モンテッソーリが1907年に始めた。将棋界で全八冠を制覇した藤井聡太さん、米グーグルやアマゾンの創業者らが、子どもの頃に受けていたことで知られる。
 文部科学省の2022年度の「問題行動・不登校調査」によると、小中学校の不登校は29万9048人で、学校が判断したその要因の過半数が「無気力・不安」だった。
 モンテッソーリ教育の特徴は、子どもが持つ「自分で自分を成長させる力」を引き出すことだ。例えば「数」に取り組む男子児童の隣に座ったあべさんは、安易にヒントを出さない。「大人は学びを一緒に楽しみながら、サポート役に徹する」という。「将来、男児がどんな仕事に就くにしても、このやる気と集中力があれば大きなことを成し遂げられると思う」
 あべさんは元舞台俳優だ。子ども向け番組の全国ツアーで病棟などを回るうちに、個性豊かな子どもたちに出会い、その学びを自分の手で支援したいと06年に一念発起し、この道を志した。ただ、モンテッソーリ教育は、日本では幼稚園や保育園での実践にとどまり、小学生以上に向けた学校はほとんどない。「働く場所もないのに、米国に資格を取得しに行きました。ないなら作るしかない」と「ファーム」を設立。現在は0~12歳が在籍し、埼玉や神奈川県から通う児童もいる。
 あべさんが大小さまざまな箱の教材で説明し始めたのは、天体の大きさだ。「この小さいのが1としたら、100万倍の大きさのこの箱が太陽です」。子どもたちは、「でけー!」と歓声を上げて太陽の箱に入ってみたり、粒のように小さい「地球」を探したりして、体感的に学んでいた。
 「モンテッソーリ教育は、目先の志望校に入るためだけの勉強ではなく、集中力や、知ることを喜ぶ姿勢といった、人間としての魅力を育むもの。小学校が日本にほとんどないのは、私はもったいないことだと思います」